2001年4月15日
地元群馬県からちょうど東京に向かうという友人の車に便乗させてもらう。行き先は東京、新宿。
夜の高速道路は空いていて、等間隔に並んだ街灯があっという間に流れていく。窓の外をぼーっと見ながら、これからのことを少し考えた
「この旅行は一体どのくらいの期間がかかるのか?」
「お金がないのに世界一周はできるのか?」
「期限」の方は見当もつかないし「できるのか?」の方は考えるほどできないような気がしてくる。
あまり考えてもしょうがない、皆目何が起こるか検討がつかないのだ。しかし不安より期待が大きい、その証拠に遠足を前にした少年の様な高揚感がある。
車は渋滞に巻き込まれることもなく快調に飛ばし、思ったよりだいぶ早く目的地に着いた、「早い」と言ってももう真夜中に近い。
友人に礼を言って車から降りる、日曜日の深夜ということもあって人通りはまばらだ。
ポケットの中をまさぐる。出てきたコインは合わせて160円なり。
クレジットカードの類は一切持っていないし万が一に備えて持っているお金もない。つまり160円が正真正銘の所持金すべてになる。
2001年4月15日、東京都、新宿駅東口前。誰に見送られるわけでもなくひっそりと旅が始まった。
「旅が始まる」などと大袈裟なことを言ってみても何の変化があるわけがない、出来ることは無いのだ。
普通の旅行ならば、深夜営業している宿泊可能な宿を探し始めるところだが、宿泊するにはどう考えても160円じゃ無理。
となると自然と寝るところは外になる、つまり野宿。
旅に出て最初の行動は寝られそうな場所を探すこと、それだけだった。
眠れそうなところを探して新宿駅周辺を徘徊する、手には先ほど拾った新聞紙持っている。。
こいつを広げて寝転ぶ予定。
もちろん、テントもなければ寝袋もない。
4月なので今身に着けている服で何とか眠れそうだ、ティシャツと長袖のシャツ、その上にカッターシャツ、さらにパーカー、そしてフリース。
野宿を想定というか野宿のみだろうと思って少々厚着をしている。
参考までにホームレスの人々はどんなところで寝ているのか観察してみる。
駅の地下、既に明かりが消えた暗がりには無数に人が秩序もなく寝転んでいる。
ここは雨も風も来ないし、暖かい所だが、ここで寝る気になれない。
縄張りという概念はないと思うし、誰も文句は言わないだろうが、ここに寝転ぶ気にならないのは、心のどこかでまだ「この人たちとは違う」と一線を引いているのだと思う。
そう時間をかけずに同じになるような気もするが、今はまだ捨てきれない気持ちがある。それにいきなりここで寝られるほど度胸もない。
地下から再び地上に戻る、地下の淀んだ生暖かい空気に比べると外気はまだヒヤッとするほど冷たいが心地よく感じた。
所々寝転んでいる人を見た、閉店した店の入り口の前、高架線の下などどこでも寝ようと思えば寝られる、心持ひとつなのだろう。
今までの人生で新宿は何度も着たが、ここまで路上で寝ている人がいるとは驚いた。
普段の生活では気がつかない、いや無意識の内に見ないようにしていたのだろうか。
色々な候補地を回ったが、結局一番最初の東口のロッカー脇に決めた。
ここは深夜とはいえ人が行き来していて静かではないが、寝転んでいる人達があまり長期の人っぽくない、終電を逃したサラリーマンとか、酔いつぶれた学生など、今夜一晩限りという感じの人達だ。
また近くに交番があるので安心ということもある。
先ほどの新聞紙を開き2枚を並べた、かばんを枕にして靴も脱がずに寝転んだ。
アーケードになっている通路には明かりが灯いたままだが、「消灯してくれ」と言うわけにもいかない。
地面に近いので人が通る度にカツカツと足音が耳元で響く。「路上で寝るとはこういうことなのだ」と思いながら寝る。
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