ある寒い朝の出来事

2002年4月4日

昨日、日本語を話すユンさんに下ろしてもらった所でヒッチハイクを始めたものの車は止まらなかった。

場所が悪いのか?」 と歩き始める。

ところが片側3車線の大きな道路が続き、ヒッチハイク出来そうな場所が見つからないまま日が暮れた。

街が近かったのでそのまま郊外まで歩き、夕食に以前に貰ったビスケットをかじった。

それから道路工事現場を見つけたのでそこで寝袋を広げて眠ることにした。

そのまま工事現場で眠る
【写真】そのまま工事現場で眠る

眠る前からだいぶ寒かったが、この日はホントに冷え込んだ。寝袋の中でも特に腰から下が寒く、上着を脱いで腰から足にけるがあまり効果がない。

体を丸め目を閉じる。

寝返りを打つ度に腰にかけた上着がずり落ち、また寒さで目が覚める。これの繰り返しだ。

頭はパーカーをすっぽりかぶり、寝袋の中に潜り込んでいたが、顔の覆いきれていない部分に寒さが突き刺さってくる。

とにかく寝返りを打つたびに目を覚ますの熟睡できない。

長い夜だ。

ようやく空が白み出し、視界が利くようになったので寝袋を見ると、なんと寝袋に落ちた露が氷の膜になってくっ付いている。

霜ではなく完全に「氷」そりゃ~寒いわ。

周りはやっと薄っすらと明るくなって位で、まだまだ寒いので再び寝袋の中に頭をつっこむ。

すると足音がこちらに近づいて来るのが分かった。

ハッ」として寝袋から頭を出すと、一人のおじさんが寝袋の脇に立っていた。

ははっ、何でしょうか?」という笑顔を私がすると、おじさんは「×○△×○!!」と言う。

当然何と言っているか全く分からないのだが、言っていることが推測できる。

きっと「おまえ、何でこんなところで寝てるんだ??」というようなことだろう。

おじさんはろくろく返事も出来ない私に対して警戒するどころか、寝袋の横に座り込み、凍った寝袋を触り、また「○×△×!!」と言っている。

恐らく「凍っているじゃないか?」だ。

凍っている寝袋を触って言うことと言ったら、国や文化が変わっても「これ凍ってるよ」しか思い浮かばない。

日本語が通じる相手ならば、「そうなんですよ~、寒い寒いと思ったら、凍ってたんですね、よく生き延びました~」と冗談で返せるが、相手は韓国語のみ。

冗談の一つも言えない。

私は覚え立ての「チョヌンイルボンサランイムニダ(私は日本人です)」と伝えると顔をしかめてまた「○×△×。」。

分からん。

「だから、、、おじさん分からないよ~」と言ってもそれも通じないが、やがて私が全くハングルが話せないことが分かったらしい。

かなり惨めに見えたのか「コーヒー??」と手でコップを飲むふりをしながら言う。

何のことだか分からないけど「コーヒーを飲むか?」と聞いているみたいだ。

おじさんは手ぶら、この広い工事現場にコーヒーがあるわけないのだが。

カムサハムニダ!(ありがとう)」と言ってみる。

するとおじさんは立ち上がり、工事の土手を越えてどこかに行ってしまった。

「なんだったのだろうか、きっと言葉が通じないので呆れて行ってしまったのだろう」何事もなくおじさんが立ち去ったので少しホッとした。

また寝袋にもぐり込んで「寒い!」と丸くなった。

「ジャリ、ジャリ」また足音が近づいてくる。

また人が来たのか?」と寝袋から顔を出すと、先ほどのおじさんだ。

手には白い紙コップを持っている。おじさんはあきれて立ち去ったのでなく、どこからかコーヒーを持ってきてくれたのだ。

また私の寝袋の横に来ると、ニコニコしながら「コーヒー」と言って紙コップを差し出してくれた。

カムサハムニダ」とそれを受取る。紙を通じて暖かいぬくもりが手に伝わる。

こんな工事現場で寝ている得体の知れない外国人の為に、どこからコーヒーを持って来てくれた。

ありがとう、体が温まるが、心も温まる。

紙コップのコーヒーを両手で囲うようにして持ち、少しずつ飲んでいるとおじさんはまたどこかに姿を消してしまった。

再び戻ってきた時にはスナック菓子とヨーグルトが入った袋を持っていた、そしてそれを私に差し出す。

「いいよ(いらないよ)」という意味で手を振るが・・・「持って行け」という素振り、袋を私の所に押し付けるおじさん。

「いらないよ」「いや、持って行け」というのが何回か繰り替えされる。

おじさんの迫力に負けた。「カムサハムニダ」と言いながら袋を受け取けとると、おじさんは「またな」という感じに軽く手を上げて行ってしまった。

本当にありがとう。こんな氷るような所で寝ている外国人に優しくしてくれてありがとう。

ありがたかったが、一体あのおじさんはこんな朝早くに工事現場に何をしに来たのだろうかと少々疑問も沸く、寒い日の早朝の出来事だった。

工事現場だけに7時には監督らしき人が現れ、人がちらほら集まってくる。

こんなところで寝袋にくるまっていたら怪しすぎるぜ~とまだ寒かったけど濡れた寝袋を袋に詰め、早々に工事現場を後にした。

9時過ぎ、ようやく気温も暖かくなりヒッチハイクする気になってきた。

また条件のいい道を探ししばらく歩き・・・・「今日は止まってもらえるのかな~」かなり不安だ。

なんせこの2日間止まってくれた車は一台だけだもの・・・・と思いながら昨日つくったボードを揚げる・・・となんと1分くらいで100mくらい過ぎたところにトラックが止まる。

「まじですか~?」と思い、そのトラックに走り寄る。

また韓国人と思われたらしく、「日本人です」というと「うおっ!」という顔をされる。

またゼスチャーで「いいよのって」と言われ、トラックに乗り込む。

またも・・・・会話ができーーーん。

ソウさんは何か言っているが「完璧にわからん」とりあえず地図をみせ、「ソウルにヒッチハイクでゴーゴーだ」と言ってみる。

のせてくれたソウさん
【写真】のせてくれたソウさん

分かったような分からないような感じだったが、しばらくすると、ソウさん電話をかける、「むっこのパターンは!」とピントきたが・・・やっぱりそうだった。例のごとく受話器を渡されると・・・・「もしもし・・・」と日本語。「これこれこうです。」といきさつを話し、ソウさんに電話を戻す。「オッケーキョンジュ!」

ソウさんにキョンジュまでしっかり乗せてもらう。

キョンジュは市だけど、そろそろ田舎な感じがしてきている。

私の日本で得たヒッチハイク理論では田舎の方が乗せてもらえるのだ。

「韓国もきっと田舎の方がやりやすいに違いない」そう思い、ソウルへの道もあえて大都市をさけて行くことにしたのだ。

またもグッドなポイントを発見!さっそくボードを書き、揚げる・・・・・と5分、一台の黄色の軽自動車が止まってくれる。

「わぉ、調子いいね!」、今度も若者でキムさんと言う方で、急いでないらしく、「どっかでジュースを飲もう」というゼスチャーでジュースをごちそうしてもらう。

そのまま少し、絵による筆談、少しの英単語で会話をすることに・・・・全く言葉の通じない世界で、少しでも自分の言いたいことが通じるとこれまた嬉しいものだ。

のせてくれたソウさん
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