広州駅は大きく、駅前はいつも人でごった返している。
そして日本では考えられないが、電車待ちで夜を明かす人がものすごく多い。
ホームレスの人とは違い、一般の人が駅で夜を明かすのだ。
それもかなり大勢、恐らく300~400人もしかするとそれ以上の人が夜通し駅前にいて、広場の前で眠っている。
電車の発着が24時間体制なのか、それとも皆宿泊費をけちっているのか。
とにかく多くの人が寝ているので、駅前で一晩明かすのはかえって「安全」に見えた。
駅近くのユースホテルに宿泊している石田君に大きな荷物を預かってもらい、さらにそこで話こんで夜の11時ぐらいに駅に向かった。
6月の広州は日が暮れてもムッとするほどの湿度があり、暑い。
駅前は一見秩序もなく人が寝ているように見えたが、実は公安員が管理していて、寝てる人が広範囲にならないようにまとめている。
つまり警察公認の野宿場所ということだ。
皆がゴロゴロと横になっている範囲に入る。
駅前の街灯はオレンジ色の光が強く、照らされるすべて物がオレンジ色を帯びている。
もちろん入場無料。
そのエリアでは家族連れが大きな荷物を脇に並べて寝ていたり、若者がバックを枕に気軽に寝ている。
日本では見られない貴重な野宿ゾーン。
「さて、私も」と横になろうとしたのだが、石田君に預けた荷物の中に地面に敷くビニールシート入れたままだった。
「なんたることだ、野宿の必需品を忘れるとは!」ここまで野宿で来た者らしからぬミス。
「弱った、新聞紙でも敷くか」寝転がっている人は新聞を敷いている人も多い。
向こうから新聞を大量に抱えた人がやって来た。
新刊ではなく、不ぞろいの新聞紙を大量に持っている。
「もしや?」その通り、彼は野宿希望者に新聞を売っていた。
近づいて来たので「いくら?」と聞くと「一元」という返事が戻ってきた。
「高い!」新刊ならまだしも、どこかで拾ってきたような新聞を一元で売るとは。
しかしそれでも需要はあるらしく、彼はやって来る客に一元と新聞紙を交換している。
「なかなかの商売魂だ」
しかし、どうしてもそれを買う気にはならなかった。
「捨てられた新聞を売るなんて、なんてえぐい商売なんだ、いやむしろ賢い」
一度野宿ゾーンを離脱し駅の周りに向かった。
駅の側には捨てられているが簡単に見つかる。
それを拾い、戻ってから地面に広げ横になった。
半袖で寝ても野宿の天敵である蚊が来ない。
これだけの人がいれば相当数の蚊がいなければ刺されることはないだろう。
公安員が沢山見張りをしているので安心して寝むれる。
案外野宿するには良い場所だ。
夜中、冷たいものが顔に当たりだして目が覚めた「雨だ」。
広場で寝ていた大勢の人が一斉に駅の軒下に駆け込む。
寝ている人が次々と起き上がる光景が面白かった、雨も野宿の天敵だ。
軒下に入るとまた皆適当な場所を探し横になる。
この構内は先ほどは野宿ゾーンでなかったのだが雨だから寝てもよいらしい。
空が明るくなって来た。
周りの人が駅前の商店の人に起こされるている。
日本の新宿で駅員さんが丁寧に起こしていたのとは大違いで「起きろ、ここは邪魔なんだよ!」と勢いよく寝ている人に言っている。
「こりゃ、寝ていられないな・・・」起き上がり駅を後にした。
広州駅前、雨が降らなければなかなかよい野宿場所だ。