行く当ても無く、知り合いも無く、自転車で走れる道もこの先は無い。
シンガポールはマレー半島の先端だ。
結局、先日寝た港に戻り、マットを広げようとすると「シャカシャカシャカ」とウォークマンのイヤホンから漏れてくるような音がする。
聞き慣れない音だ、それは地面に近いところから聞こえてくる。
聞いたことの無い種類の音で全く何の音だか想像もできない。
腰を落とし、頭を地面に近づけ、耳を澄ましてみる「ジャカジャカジャカ」(昆虫系の虫がたくさんうごめいている音をご想像ください)確かに音がしている何かが無数に動いているような音だ。
音のしている方にさらに近づき暗闇で目を凝らしてみる。
黒く小さい物が無数にうごめいている。
「蟻だ!!」
しかも大きい蟻。それが分かった時は「うおっ」かなり驚いて後ろに遠のいた。
一列に並び物を運んでいるのではなく、すごい数が塊になって、蟻が闇の中で何か作業?大移動?している音だった。
蟻にそんな音が出せるのかと思う様な異様な音。
その音を立てているのが蟻だと分かると余計に不気味に聞こえた。
前回は芝生の上に寝たがいつその蟻が来るかかと考えると恐い。
シートを芝生ではなく、離れたコンクリートの上に敷き、横になった。
蟻からは十分離れたつもりだったのだが、寝ているとズボンの中がチクチクして
「うごっっあ」
と目を覚ます。ズボンの上からで蟻は見えないが、蟻が這っている感覚だ。
それも多数。片っ端からズボンの上からひっぱたく。それでよく見るとシートの上にも無数の蟻が!!
「甘い物など何にも持ってないぞ!蟻!」
と蟻に向かって叫び、シートを捲くし立て蟻を払い、虫除けスプレーをシートの周りに一周にまいた。
眠気で意味も分からずにした行動だったが、これが効果があったらしく、その後、蟻たちはやって来なかった「ふー 」。
明るくなっても人が来ない所だったので、10時位まで横になっていた。
起きてからは当てもなくワールドトレッドセンターにフラフラと行き、外のベンチに腰掛けた。
「この先どうすれば」と途方に暮れる。
マレー半島を南下してシンガポールまで来たのだが、ここから先、陸路は無い。
昨日少し話した警備員さんに偶然会った。
向こうも覚えていてくれたらしく「ハイ」とこちらに話しかけて来てくれる、彼は自分の名前は「カルビン」だと名乗った。
「先日、友人を見送れたかい?」という話に始まり「今はインドに渡るための船を探している」という話になった。
するとカルビンさんは「こんな船会社があるから、行ってみろ」と船会社の名前を数社書き出してくれて、場所も教えてくれた。
さっきまで途方に暮れていたが少し希望の光が出てきた。明日、早速行ってみよう。
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