貴重な水

断崖絶壁で目を覚ます「生きている」ということは地滑りは起こらなかったらしい。

ふぅ、今日も生き延びた

冗談ながら思う。周りには人っ子一人おらず、車も全く通らない、静かな夜明けだった。

チベットの道の淵にテント
【写真】チベットの道の淵にテント

そして朝食はいつもの蜂蜜クッキーと昨日もらった冷えたバター茶。ちなみに冷えたバター茶は油が個体化していて見た目は悲惨だったが、味は変わらなかった。バターチャを流し込むと体が温まる感じがする。

今日も山沿いの細道の登りからである。ここは道が特に細く、車がやっと一台通れるくらいの道で、運転をちょっと誤れば崖下に簡単に落ちられそうだ。もちろん舗装のかけらもなく、ガードレールなんて存在しない。しかし車にとっては細道でも自転車にとっては幅的には十分。

道は補足ガードレールなどはない
【写真】道は補足ガードレールなどはない

昨日から見えていた、峠というか山の一番高いところに11時頃到着。

昨日からずっと視界に入っていたのになかなか着かなかった。そして「着いた!」と喜んだのも束の間・・・・その山の陰にはまたも・・・・登り道が果てしなく続いている。ここの登りは65km続くはずなのでそう簡単には終わるわけがない。

【写真】上り坂が延々と続く
【写真】上り坂が延々と続く

それに道路標識も無いので、ここが昨日の「塩井」からどの位で、次の町までどの位かも分からない、とにかく目の前に広がる道をひたすらに進むだけである。

完全に山道の登りだったので、人はもちろん、村も無いと思っていたが、坂の途中に小さな、地図にのらないような村があった。そこで個人宅か、商店か分からないような店があり、昼食インスタントラーメン1元(15円)を食べる、5角(7円)のインスタントラーメンもあるというので、それも食べ腹一杯。元気になり再び登り坂を進む。

チベットはもちろん、辺境でも標高が高い所は日差しがものすごく強く、日が出るとジリジリと肌を焼かれる。日が出なければ、ものすごく寒い。

その上いつもカラッカラッに乾燥していて、汗は一瞬で吹き飛んでいき、唇は乾燥してバリバリに荒れている。

呼吸が苦しくて、口を開けて呼吸をするのでのどの奥までカラカラに乾燥している。こんなことは初めてだった。しばらく激しく呼吸していると、のどの奥が渇いて声が出せなくなるどころか、痛くなることさえあった。

この乾燥具合を考えると水はかなり貴重だった。乾燥のせいか、やたらに喉が渇く、水が無くなってしまう前に、水を探さないと大変なことになる。今日ももれなく山から湧いている水、民家に引いるパイプの途中から水を分けてもらった。

前回の失敗より学んで水をもらえる時に思い切り水を補給することにした。それからもう飲めないというくらい水を体にも詰め込んだ。水であたるとすぐに分かる、腹の調子がすぐに悪くなるからだ。今日は沸き水をたらふく飲んだが何事も起こらない。飲める水だったらしい、よかった。

稀に湧き水ポイントがある
【写真】稀に湧き水ポイントがある

峠を目指して、進んでいた。見えているが、なかなか辿りつかない。前回の山と比べ、こちらは村があり人々が生活している。漢民族と違い、彼らはやたら陽気に話しかけてくるし、笑顔が多い。

チベットの人は笑顔が多い
【写真】チベットの人は笑顔が多い

遙か遠くの丘の上からも「ハロー!!」と声をかけてきたりする。夕方5時を回った頃、見えていた、登りの頂点に着いた。ここはタルチョと呼ばれる頂上を祭る旗が立っていたのでここが山の頂上だと確信できる。

【写真】峠の終わりにはタルチョと呼ばれる旗がある
【写真】峠の終わりにはタルチョと呼ばれる旗がある

ここは標高4300m。夕方だったので風が強く、冷たい。ある服を全部、着ていたがそれでも凍えそうだった。

早く、1mでも低い所へ

と目の前に広がる下り坂を降り始める。今日は特に寒い、風邪を引きそうだ、歯をガチガチさせながら、足ブレーキを駆使し下る、下る。

ずっーと下の方に見えた建物がだんだん大きくなり、近づいてくる。それに従い寒さも和らいでくる。羊飼いのお兄さんが羊を連れて歩く横をすり抜け、下れるだけ下った。坂道がやがて緩やかになり、また川沿いの道になった時、日はすっかり暮れ、あたりは暗くなり始めていた。

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