信仰心

町を出て、空を見上げると雨雲の合間に青空が見えていた。

雨雲の間に青空が見え始めた
【写真】雨雲の間に青空が見え始めた

「いいぜ!その調子で晴れてくれ!」と願うが、青空が広がるよりも雨雲の勢力の方が強く、結局、曇りになり、続いて雪がぱらついてきた。

前方に足を引きずり、杖を突きながら歩いているの人がいた、目が合い「にやっ」となったので「どこまで行くのですか?」と私が尋ねると「ラサ」と言う、彼は足が悪いらしく進みがものすごく遅い、それでも歩いて行くらしかった。

五体投地の人もそうだったが、信仰心は強い精神力を生むようだ。チベットの人の信仰心にはたびたび驚かされる。

五体投地の巡礼者
【写真】五体投地の巡礼者

チベットでは宗教が人々の心の奥底に強く根付いる。

宗教に感心が薄い私には考えの及ばないシーンを見せ付けられる。先程の足の悪い男性も、食料を少し持っただけで何千キロ先のラサに巡礼に向かうのだという

この道中、徒歩はもちろん、小さい子を連れた親子や、おばさんの集団に出会ったが皆、笑顔で「ラサ」に向かうと言っていた。

歩いてラサに向かうという親子
【写真】歩いてラサに向かうという親子

その度に私は彼らの信仰心の強さを思い知らされた。現代の日本で巡礼と称して何百キロも歩いている人を見たことがない。

四国のお遍路さんというのがあるが、そこに何故か強い信仰心を感じない。しかしラサに向かう人には強烈な信仰心が見える。

宗教が彼らの心の一部に溶け込んでいるからこそ出せる力のようなもの。ポーズではない、心の奥底からくるものなのだ。

相変わらずの雪の中、頭を真っ白になりながら歩く若者の横を自転車を押して歩いて行く。

夕方近く、雪は更に勢いを増し、しかもやたらに水分を含んだ雪に変わった。

雨合羽や、自転車の荷物に積もっているし、靴の中はビッチョリに濡れている。上りで体を動かしているのであまり寒さは感じないが、下りで体を動かさないと凍えるような寒さだろう。

今日は雪が降り始めた
【写真】今日は雪が降り始めた

前方は激しい雪のために視界が悪いというか、殆ど見えていない、それほど雪が降っていた。

「あと10km進んだら・・・」

テントを張ろうと思って進んでいた「あと10km」というのは今、目指している峠まで60km、あと10km進むと明日50km進むと峠を越えることが出来るので、そんな計算からだ。

私を突き動かすこのエネルギーの正体はなんだ、少なくとも彼らの様な信仰心ではないことは確かだ。

今日は雪が降り続く
【写真】辺りが白くなりなかなか綺麗

雪に覆われた道路、寒いが綺麗である。

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