15 イタリア回遊編

歩き旅の二人組み

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旧市街を抜けたところで道に迷った。

ちょうど目の前をギターを持った若者の2人組みが通りかかったので道を尋ねる。

よく見ると2人は旅行者の身なりだ、背中に背負った荷物は大きく服装はオシャレとは程遠い少しくたびれていてやけに厚着をしている。

フランス語で話しかけると相手が「英語は?」と聞いて来たので「そちらの方がいいです」と返事をすると、背の高い方が流暢な英語で街から出る道を教えてくれた。

街を抜ける、車がクラクションを鳴らしたり、奇声を上げていくので驚いた。同じフランスなのにここは随分と荒々しい印象を受ける。途中野宿ができそうなところを見ながら進んだ。

幹線からそれて脇道に入る。私がテントを晴れそうな所を探してウロウロとしていると、さっき道を聞いた2人組みが通りかかった。

「さっきはどうも」

と私が声を掛けると向こうもニコヤカに「ハイ」と答えてくれる。

「旅行者なのですか?」

と聞くと

「そうだよ」

と彼らは答える。それにしては彼らは道に詳しかったのでどうしてか?と尋ねると、

「ここにはもうひと月近くいるから」

とのことだ。手に持っているギターケースなので

「もしかしてギターを弾きながら?」

「そうだよ」。

「私も自転車旅行をしながら手品をしているんです」

というと

「手品?」

と英語を話す彼が目を輝かすのが分かった。

「実は旅行に出る前は手品をやっていたんだ」

と言い、続けて

「どんな手品をするの?」

と言う

「カードは使わないで、小物を使ったものです」

と私。手品と言うとカードを使ったものを想像する人が多いがカードは距離があるとあまり見えないので私は使わない。

「ちょっと話さないか」

と彼が切り出した。夜中に野宿場所を探しているだけの人間に急ぐ理由もない。「いいですよ」と私は快諾した。街灯だけが明かりの道路わきに自転車を止めて、話を始めた。彼らはノルウェイとエストニアからの二人組みで冬は南の島に来て、夏は自分の国に戻るといっていた。そんな生活をもう5,6年しているらしい。

ノルウェイの彼が

「カードはあるか?」

と聞くので、持っていたトランプを渡すとそれを華麗に広げて、扇形にした。なれた手つきだ、だいぶトランプに触っていないとそうは行かない。それからミリオンカードと呼ばれるカードを何枚も出す芸を見せてくれた。今まで手品をしてきたが、ミリオンカードをここまで綺麗に出来る人に会ったことがない。複数のカードも一枚一枚キチンと出せている。これも練習をしなければならない技だ。

それから相手の時計を一瞬で取ってしまう手品も出来ると言っていたが、これは路上ですると泥棒と思われるのでやらない方がいいよと言う。確かに路上ではスリと間違われそうな手品だ。

ひとしきり手品の話題を話した後、彼らは砂浜を海の方へ消えて行った。私は道路沿いの雑木林にテントを張って眠る。

こんな人も来ないような島の夜中にまさか手品談義をするとは思わなかった。

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