カーニバルの後半から気温が上昇し始めて、それに伴い路上で芸人を目にする機会も増えてきた。
先日は逆立ちして動かないという芸を見た、この芸はローマでも見たので2回目なのだが、ひたすら逆立ちするというのはどういうものなのだろうか、出来そうで出来ない。
今日も手品に向かう、いつもの場所に着くと既に先に芸人が来ていて準備をしていた、
「どんな芸をやるのかな?」
と準備を見ていると、カーペットを広げ、看板を出し始めたのですぐに分かった、
「逆立ちの彼だ!」、
先日見たのだけど、逆立ち中に話しかけるのは悪いと思い通過しただけなのだが、今は準備中なので思い切って話しかける。
「こんにちは」と話しかけると、彼は嫌な顔せずにこちらを振り向いた。私が次に言葉を発する前に彼の方から「あっ、マジックの人だね」と言う、「はい、そうです」というと、「先日見たよと」向こうもこちらのことを知っていたみたいだ、同じ路上の芸人はお互いよく見合うことが多い。なぜなら単純に他の人がどんなことをしているか気になるからだ。
逆立ちの男性は続けて
「2年前にニースにもいたよね?」
と言われたので、
「そうです、いました。」
と答えてから私は
「1年前にローマにいたんじゃないですか?」
と彼に聞き返した。
「いたよ、路上の芸人は色々な所を移動するからね」
と彼。
実は1年前にローマでやはり逆立ち芸をしている人がいたのだが、彼だったのだ。逆立ちをしていると顔が見えないので、どんな人がしているか分からなかったが、逆立ち芸をする人はそんなにいない、というか彼しかいないと思う。
「私はイワサキです」と名乗ると彼も「自分はジェシーだ」と言って、右手を差し出してきた。ジェシーはポーランドの出身で、色々な場所で逆立ち芸をして生活していると言っていた。
恐るべきことに、ジェシーの逆立ちは1回始めると1時間は行うらしい。先日も通過しただけなのでどの位の間逆立ちしているか分からなかったが、今彼に聞いて始めて分かった。そりゃそうだ、1時間の逆立ちをずっと見ているわけにもいかないもの。
私は恐らく中高生以来逆立ちをした覚えはないが、5分逆立ちしただけでも大変だった記憶がある、それを1時間も逆立ちするって話を聞いただけで頭に血が上りそうだ。
逆立ちをしていると実際に血が頭に向かって溜まるのじゃないかと思うのだけど、大丈夫なのだろうか。そう思ったのでジェシーに
「1時間も逆立ちしていて、頭は大丈夫なの?」
と聞いてみる
「全然問題ないよ、むしろ非常に健康になったよ。昔は背中が痛かったのだけど今じゃそれも治って、体も調子がいいよ」
と言う。実は逆立ちは健康によいのだろうか?
ジェシーは
「今年は逆立ちのギネスレコードに挑戦するんだ」とニコニコしながら言っていた。「今のギネス記録は30分らしいけど、僕は1時間はできるからね」とのこと。
2013年度ギネスレコードの逆立ち記録にジェシーの名前が掲載されるかもしれないと思うと楽しみだ。