偶然の再会

路上で芸をやっていると思わぬところで思わぬ人に再会することがある。日本では国を超えて偶然に人に会うということは想像しにくいかもしれないが、国間の行き来が自由なヨーロッパではそれが時々ありえる。

近年で最も時間と場所を越えて再会したのはマルタ共和国という地中海に浮かぶ小さな島国で、4年前にパキスタンで知り合った人に路上で偶然に出会った。

お互いが旅行者で似通った国、ルートを回れば観光地などで再会することもあるだろうが、私があった相手の方は現地の駐在員である。そして4年と言う年月を経てバッタリというのだから驚いた。

この時も私は気が付かず、相手の方が「あれ~パキスタンで会いましたよね」と声を掛けてくれた、いつものごとく私は「そうでしたか?」と聞き返しながら、頭の中の記憶を辿り「どこだ、どこだ?」と思い出すのだけど思い出せない。

相手にいつ頃、どういう状態で出会ったかを聞いてやっと思い出せた。「そうそう確かにお会いしました」となる。だいぶ失礼だ。しかし数年前に少し話しただけの人間をよく覚えているなと感心してしまう。

上記の様なことは稀だが、ヨーロッパ国内で会った人に、ヨーロッパ国内で会うケースは比較的に多い。あるフランス人のカップルなどはスイスのジュネーブで会って、フランスのニースで会って、イタリアのローマでも会ってしまった。もちろん全て偶然で。3度目などは別れ際に「今度はどこの都市で会うのかしら」と言われた。

ところで先日、マクドナルドの窓際の席でコーヒーを飲んで休憩していると、外のテラスの正面の席にサングラスを掛けた東洋人男性が座った。サングラスをしていたがすぐに分かった。2年前の夏にマルタ共和国の首都バレッタで会った彼だ。サングラスを掛けていたけど、体系や仕草ですぐに分かった。

「あっ」と思い、慌ててガラスを「コン、コン」と叩くと、彼も気が付いたらしく、「おおっ、御久しぶりです、お元気ですか?」と足早に店内に入ってきた。

もし私が窓際の席に座らず、彼もテラス席に座らなければ気が付かなかっただろうし、またお互い数分でもずれれば会えなかった。
人が再会を果たすのは、何か一つの要因が異なっただけですれ違って会えないのだ。それを「偶然」という言葉で表してしまうのは簡単だけど、多くの要因が重なりあって、この結果を導いているのだ。そう考えると偶然の再会の確立はかなり低い、昔の人はそれを「縁」と呼んだのかもしれない。

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