ユーロ2012

「ウォー!」

 カフェから歓声があがった、何があったかすぐに分かる、イタリアチームがゴールを決めたのだ。

 先ほどからイタリアが優勢になると度々声が上がる。サッカーのユーロ2012でイタリアが快進撃を続け、いよいよ準決勝である。対戦相手はドイツ。

 今滞在しているのはイタリアの北部のアドリア海沿いのリゾート地だ、ここはイタリア人ばかりでなく、海のない国籍の人もやってくる。ざっと気がつくだけでも近郊のスロベニア、オーストリア、スイス、更にハンガリーやスロバキアなど海のない内陸からも海を求めて訪れる人が多い。どうしてそれが分かるかって?簡単です、こちらでは車のナンバープレートに国籍が表記されているので。

 意外なのはドイツ人が多いこと、ドイツの北部は一応海に面しているのだけど、あくまでも北部の一部のみ。南部のドイツ人に取ってはオーストリアをまたいででも地中海に向かう方が近いのだ。しかもこちらは南で太陽がサンサンとしている。というわけでドイツ人が非常に多い。街のツーリストインフォメーションもイタリア語の後にはドイツ語で表記があるほどだ。

話は戻って、カフェやバーに集まって大型テレビでサッカーを観戦している人達にはドイツ人も少なくないはずなのだが、ドイツが攻め立てても全く反応はない。少数派ということもあるだろが、至って静かだ。国民性とはこんなに違うのかとカフェを後ろから覗き込みながら思う。

 準決勝はイタリアが2対0でドイツを下した。ゲームが終った時のイタリア人のドンチャン騒ぎがすごい。クラクションを鳴らし、窓から乗り出した若者が国旗を振りながら、通りを行ったり来たりする。道行く若者は笛を吹き鳴らし、歌を歌い、奇声を上げる、という凄まじい状態になっていた。

で、先日の日曜日、ユーロ2012年の決勝戦スペイン対イタリア戦が行われた。その時間路上に出ても人通りが明らかに少ない。カフェやバーの席は満席で、後方からは足を止めた人々が画面に見入っている。試合の流れは明らかにスペインが押していて、あっという間にイタリアは点を取られてしまった。観客からはため息が洩れる。

「これは勝つのは難しいかな」とゲームの成り行きを見届けず、私は路上に戻り、芸を始めた。いつしか時間が流れたが、準決勝を決めたときの様な音が聞こえて来ない。「これは駄目だったかも」と思っていると、何度か話したことのある男性が「4対0でスペインに負けたよ」と言う。「えっ何、やっぱり試合は終っていたの?」と聞くと、そうだ「4対0」片方の指を4本立て、もう一方の手の指で輪を作って教えてくれた。

イタリア人といえどもやはり負けゲームでは騒がないのだ。ドイツ戦でのドイツ人と比べて国民性かと思っていたが、そうではなかった。負けたチームの国民は騒ぐ理由がないから静かなのだ。対して優勝した同じラテンの国であるスペインは今頃、恐ろしいほどの騒ぎだろうか。

【写真】街角カフェの画面を見つめる人々
【写真】街角カフェの画面を見つめる人々

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