菜食主義者

 日本ではあまり馴染みがないがヨーロッパでは時々ベジタリアンと呼ばれる肉を食さない人に出会うことがある。

 ベジタリアンと聞いて私の頭に真っ先に思い浮かぶのはイラン、アゼルバイジャンと約4カ月近く一緒に旅行をしたフィンランド人のタトゥだ。タトゥはいわゆるベジタリアンで、旅行中の自炊では一切肉類を使わなかった。まぁ肉が野菜より高いので私達にはちょうどよいのだが。

 しかし困ったのは人々に招かれた時だ。イランでは「これでもか!」というほどよく家に招かれる。

 お茶だけだったら問題は無いのだけど、どーんと食事を用意してくれた時が大変。イランではカバブと言って羊の肉の串焼きが名物だったりするだのが、もちろんタトゥは手をつけられない。

 サラダだけを食べて「あれ?どうしたの?」と突っ込まれる。「私はベジタリアンで・・」と説明をするのだが、文化の違いか「なんでだ?なんでだ?」質問攻めに会う。言葉が通じる相手ならまだよいが、相手がペルシャ語しか理解できないとなると状況は更に悪い。

 辞書を引きながら「私、野菜だけ食べる」と相手にどうにか伝えるが、それが「どうしてなのか」というところまで伝わらない。

 一度、安い食堂に入った時もメニューがさっぱり分からず、回りの人が食べているのを適当に指差して注文すると、来た料理には全て肉類が入っている。

 タトゥは自分がベジタリアンなのがどうしても伝わらず、結局厨房に入り、鍋のふたを一つずつ開けて、自分が食べられそうなものを探し始めた。

 見ている店員達はあっけにとられたのかその姿をポカーンと眺めているだけだった。私達は半分笑いながらその姿を見ていたが、「ベジタリアンも大変だな」とつくづく思った。

とにかく旅行者でベジタリアンは旅行の難易度を高くするといってもよい。言葉の通じない地域で自分の趣向を伝えなければならないのだから。

ところで先日、日本人のベジタリアンの方に会う機会があった。その方はベジタリアンの中でも特に規制食品が多い「ベーガン」と呼ばれる主義だという。「ベーガン」の人は肉はもちろんのこと、卵、乳製品、蜂蜜も口にしないのだとか。日本人ならば寿司はもちろんラーメンも駄目、ダシによっては味噌汁も不可になる。焼肉なんてとんでもない。

日本の料理はダシを使うものが多いので、食べられるものの範囲がかなり狭められることになるだろう。

 パッと思い浮かべると、漬物、納豆、煮物(ダシなし)、天ぷらの野菜のみ、そば、うどんこれもダシの入っていない汁で食べなければならない。こう考えると、日本でのベジタリアンを貫くには強い意志が必要そうだが、彼女はもう数年続けているのだとから大したものである。

【写真】ベジタリアンで思い出すのはフィンランド人のタトゥ
【写真】ベジタリアンで思い出すのはフィンランド人のタトゥ
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