15 イタリア回遊編

国が変わる

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国が変わるとすべての物が劇的に変わる。

などと言ってみたものの、実際分かるのは目で捉えるもの、聞こえてくる言葉の違いくらいだろうか。それから食事をすればその味の違いに驚くこともある。ここまでが鈍い私の感知できる範疇。これら以外の「匂い」は相当異なった文化圏でないと感じられないだろうし、「触」である風は地形が変われば国が変わらなくても変化する。

イタリアからスロベニアへの変化はそれほど大きいものではなかった。人里離れた寂しい海沿いの道にポツンと忘れ去れたかのよう「スロベニア」の標識が現れた。辺りを見渡すと以前は国境だったと思わせる飾り気のない古びたイミグレーションの建物がある。振り返ると反対車線の脇に「イタリア」の標識がある。確かにここは国境らしい。

厳しい山岳部になっているわけでもなく、大きな河が流れているわけでも無いのにここが国境になっている。地球からしてみたら笑ってしまうだろう、勝手に人間が線を引いて「こちらは俺の土地、お前はそっち」と分けてしまうのだから。自然からしたら笑いごとかもしれないが、人間にとれば、それこそ幾度の戦を繰り返し、多くの血を流してやっと掴んだ土地なのだろうから笑い事ではない。

ひっそりとした国境をまたぎしばらく進むと上り坂が始まった。坂の両脇には季節はずれでやせこけたブドウ畑が規則正しくならんいでいるだけで人影は無い。丘を上りきったところで一匹の白い子犬が道路沿いの家の奥から現れてこちらに向かって吠えだした。犬の鳴き声を聞いたのか、どこから犬を呼ぶ声がする、聞きなれたイタリア語だ。吠え止まない犬をなだめに年配の女性が家の方からひょっこりと現れた。挨拶をしてから目指す次の街「コペル」への道のりを訊ねる。最初は怪訝そうな表情をしていた女性も話始めると、まんざらでもなく色々と道順を細かく教えてくれた。丁寧なのだが、結局頭に残ったのは「まっすぐ行って、右に曲がれ」ということだけだ。

やっと上りきった坂を下りながら、街の名を表す標識の色が違うことに気がつき、バス停がしっかりした小屋になっているのもイタリアとは違う。これから街に入ればもっと様々なものに変化があるだろうし、人と出会えばきっと更なる違いに触れるだろう。

新たな国はまだ未知の部分が沢山あり、それまでと違った発見に驚き、共通部分に懐かしさを覚える、なんとなく新たな人との出会いに似ている。「今日からよろしくお願いします」という気持ちでスロベニアを走り出した。

【写真】ひっそりとした所にポツンとある国境

【写真】ひっそりとした所にポツンとある国境


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