お父さんに手を繋がれた幼い男の子の視線がジーっとこちらに注がれる。
父親はこちらに気がついてない。または気がついてはいるのだけど見ないようにしているか。
男の子が好奇心を抑えられなくなり立ち止まり、父の手を引く。
父親は「なんだ」と一瞬男の子に目をやり、それからその視線の先に目をやる。今度は子供の方が父の顔を見上げて不思議そうな顔をして
「あれどうやっているの?」
とでも聞いているのだろう。足を止めた親子、その親子に釣られて人が立ち止まる。
路上の芸は最初の一人の足をいかに止めるかが重要。
始めの一人がシッカリと足を止めてくればそれがきっかけになり人が止まりだす。
よい場所、よい時間帯というのはこの一人目がいかに早く足を止めるかで決まる。カーニバル中はとてもよい、ここはまぁまぁ、曜日と時間による。
演じる側からするとこの最初の一人の足を止めてもらうためにあの手この手で興味を引いていく。
通行人の視線がこちらに向いた瞬間、いかに相手の関心を引くかなのだ。全くだめで人がひたすら通り過ぎることもあれば、バシッとすぐに止まることがある。これがよい時間。アジアなどでは何もしていないのに既に人が集まって来るような国もあるが、ヨーロッパではそんなことはない。
路上の芸はともするとヒッチハイクに似ている部分がある。ヒッチハイクは相乗りを求めて車を止めるが、大道芸は観客を求めて人を止める。ヒッチハイクに止まりやすい場所や時間があるのと一緒で、芸にもそれがある。
とにかく芸をする者にとって最初の一人は重要な役割を果たす。もしかしたら最初に止まる人に呼び名があるのかもしれないと思い、色々と大道芸用語を検索したがそれらしきは見当たらない。だったら自分で決めようと「偉大なる最初の一人(The great first man)」と呼ばせてもらうことにした。
もし正式?呼称をご存知の方いましたら教えてください。