また前回の更新からずいぶんと時間が経ってしまいましたが、元気にしています。時々「生きてる?」というメッセージをリアルにいただきますが、生きていますので大丈夫です。
もし生存確認をしていただく場合、この日記の右下の方に「ツイッター」という小窓があり、そこが更新されていたら大丈夫という確認方法もあります。
ツイッターの方は筆不精の私ですが、奇跡的に3日に一回くらいはつぶやくようにしています。たぶん。
日記はかなり遅れてまだローマですが現在は夏のバカンス!ではなく、バカンスに集まる人を相手に芸をするために南部に来ております。
前置きが長くなりましたが、ここから日記です。
一つの街に長く留まると顔見知りができることがある。特に路上に出ては芸をしてるとそういうことが珍しくない。
よくあるのが同じ路上の芸人や物売り。人が多い時間、止まりやすい時間にこぞっていつもの場所に現れるので顔を知るようになる。
驚くのは、多くの人が行き交う都市や大きな街でも道行く人と顔見知りになること。
新宿や渋谷の雑踏を思い浮かべてもらうと分かりやすい。
数多くの人が行き交えば、そのか中に毎度立ち止まってくれる人がいるとは到底思えない・・・と思ったらいました、イタリアの首都ローマで。
それがマウリシオさん。
土曜日、日曜日の午後8時前後に決まってやってきては
「やぁ、イワサキ、調子はどうだい?」
といつも同じ台詞で話しかけてくる。
マウリシオさんはかっぷくのよい白髪まじりの初老の男性でいつも土曜日、日曜日はローマの中心市街をスペイン広場からポポロ広場へ散歩すると言い、私が芸をしているコルソ通りを通りかかると毎回のように話しかけてきてくれた。
話題は大抵天気のことから始まり、ローマであるイベントの話など。当たり前だけど全く込み入った話はない。
そしてマウリシオさんは日本のサンスイ製のアンプに興味があるらしく
「イタリアではこの型番がいくらいくらする?」
日本ではいくらで買えるかネットで調べてくれといわれる。
私は携帯電話を出して、言われた型番を検索に記入すると大抵日本での販売価格が表示されて、それを大体のユーロに直してマウリシオさんに伝える、
「するとやはり日本製は日本が安い」
という妙に納得してうなずき毎回落ち着く。
それから今夜のテレビで放送される映画の話も多い。そしてその映画に登場する俳優がどういう人かという話。
マウリシオさんは私がインターネットで検索してその映画の俳優写真が小さな画面に表示されるのが大好きなようで映画のポスターや俳優の写真が表示されると老眼鏡を懐から取り出してかけ、画面を覗き込み「ほれ、これこれ!」ととても嬉しそうにする。
そして話がひと段落すると
「それではまた来週」
といっていつも小銭を放りこんでくれた。
ほぼ毎週マウリシオさんは現れて、毎度のようにサンスイのアンプの話とイタリア映画の話をしていった。
最初のうちはインターネットを使って検索するのが少々億劫だったのだけど、まるでマウリシオさんの散歩のコースに入っているかのように毎回来てくれるので私も芸の合間にマウリシオさんとの会話を楽しみにしていた。
ところここ2ヶ月ほどまえからピタリとマウリシオさんが現れなくなった。
どこに住んでいるかも分からなければ連絡先も知らない。
路上で待つしかないのだ。
彼の身に何かあったのだろうか、散歩をできない何かがあったのだろうかと心配してみるも、彼がどこに住んでいて、どういった状況なのか知るすべはない。
顔なじみとの突然の別れに少ししんみり。飲み屋に通う人が突然来なくなるとバーのマスターはこんな心境になるのだろうか。
という文章をここまで書いて今日路上に出かけたら、
すっかり夏服に衣替えしたマウリシオさんが突然現れた、
「ずいぶんと久しぶりですね!」
と私は嬉しそうに話しかけると、
「いや~温かくなってきたから釣りに行くようにしたんだよ」
と言い
「carp fishing」という文字を検索してみよう、インターネットはつながっている?」
といつもどおり。小さい画面に結果が映し出されると、老眼鏡を出してみ覗き込む
「これ、これ、テベレ川に行っているんだよ」
といつもの調子でいう。
内心「ホッ」なんだよかった。元気そうで何より。
ひとしきり会話が終わると
「それではままた来週、チャオ」と片手を挙げて去っていくマウリシオさん。
今度会ったら電話番号ぐらいは聞いておこうかと思いつつ見送った。
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