私服警官

 前の記事でイタリアの警察の話をしましたが、もう一つ、イタリアには私服警官がいます。日本にもいると思いますが。

 特に大都市には私服警官が多く、今までにも数多くの私服警官に話しかけられたことがあります。

 私服警官は一見して警官と分からないので近づいてきて、映画のように内ポケットから警察バッチをチラリと見せてきます。これは一瞬ギョ!とする。

 しかし私服の警官は路上の芸などより、もっと厳しい犯罪を取り扱っているのか、許可がないならだめだよ~くらいな注意です。

 というわけで今回は私服警官か一般人が見分けがつかないという話です。

 ミラノの目抜き通りエマニエル通りで芸をはじめるとすぐに男性の3人組が足を止めた。一人は背が低く、一人は少し太っていて、もう一人は背が高い白髪の年配者。なんだかアンバランスで不自然な組み合わせ。

 それから止まった3人を見て少しおかしいなと違和感を感じた。

 普通芸に足を止める人は、「えっ」と一瞬驚いたり、笑顔の表情をして「あれなに?」的な顔をしてから立ち止まることが多い。

 つまり何らか芸に反応→顔にリアクションがあり→足を止めるという行程が瞬間的に起こっている。

 ところが今しがた足を止めた3人は、何か不自然な止まり方だった。

 まず芸に興味ありという風な足の止め方ではない。そこで何をしているんだ?という感じ。

 それから笑顔が微塵もない。どちらかというと表情が厳しく、険しい。

 私の演じているのが手品なので「ん?」とタネはどうなっているんだろうとジッと見てくる人はいるけど、彼らはそれと違う。

 と不自然なところが多かったので「もしかして?」

 そう思ったので一旦すぐに終了。

 ところが3人組は立ち去らない。私服警官だったら、芸を終了すれば「終わりか」と立ち去ってしまうか、この間を見て話しかけに来るだろう。

 しかし彼らは立ち去らず、その場に立っている、通行人の多い路上の真ん中に、観客の様に3人揃って立ち止まっている。

「あれ、警官じゃなかったのか?」

勘違い?警察官なら去るか、話しかけてくるはず。それをせず、まだこちらを見ている3人組。まるで次の開始を待っているようだ。

 「うーん、私服警察かと思ったが、勘違いだったか?」

ならば次、開始!とばかりこちらもはじめる。相変わらず3人は無表情でこちらを見ている。

 やはり、警察?と思ったのでまた短めで終了。彼らはまだ立ち去らない。なんだ一体?

 丁度制服の警察官が通りかかる、そして自然な感じで彼ら3人組と話はじめた。やはり私服警官!?と思うがイタリアではもう一つ選択肢がある。ただの地元の人。

 イタリアの警察官は勤務中とはいえ、地元の友人や知人に会うと、挨拶をしたり談笑したりする、これは本当で緊急状態でない限り結構地元との人なんだかおしゃべりしてたりするのだ。

 つまり彼らはここミラノ在住の警察の顔見知りか。

ここで頭の中を一旦整理。

 まず芸を終了した時点で話しかけてこない→警察官ならすぐに話しかけてくる。

 2回芸を見ても立ち去らない→警察官なら1回目で話しかけてくる。

 という簡単な推測から彼らは仲良し地元の3人組か。

 彼らと警察官の会話が終わった、制服を着た警察官は立ち去っていった。それでも彼らはまだこちらを見ている。

 なんだなんだ地元の仲良し三人組かということかと頭の中で決定した。すると背の高い白髪の男性が、

「ほら、はじめろ、はじめろ!」

とこちらに促してきた。

 「やっぱり、地元の人か」

と確信して彼らがいる前で3回目を開始した。もう彼らは地元の人確定なので私ものびのびと演じられた。そして3回目終了。

 彼らは見飽きたのかその場を立ち去る素振りを見せてから、こちらに近づいてきた。あれか?例のやつ

「あの手品はどうやってんの?」

と3回も見て興味津々なんだな~と構えていると。小柄男性が

「警察だけど、許可証ある?」

と言い始めた。おい!やっぱり警察かよ!

許可証を取っていたのでそれを見せると「オーケー、じゃーね」と立ち去るのかと思ったら、

白髪の男性が

「あれはどうやってんだ?息子に見せるから教えてくれ!」

イタリアの警察相変わらず面白すぎ。

【写真】私服警官は一般の人と全く区別がつかない。
【写真】私服警官は一般の人と全く区別がつかない。
 

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