本土最南端

*約ひと月半のホームレス生活を終えて東京を飛び出した。後半はゴミのあさり以外にも配給と言うのを教えてもらって食べるのに困ることがなかった。人間関係も更に広がって後ろ髪を引かれる想いだったが「これじゃいかん!」と自分を奮い立たせ移動を開始した。ヒッチハイクを繰り返し鹿児島県までやって来た。*

今日の目的地は、本土最南端の岬「佐多岬」。

8時半に出勤する三重君を見送り、その後すぐ私も出発の準備にとりかかる。奥さんの康子さんが、ヒッチハイクしやすいポイントまで乗せてくれるそうだ、ありがたい。

海岸沿いの景色のいいところを走る。思った以上に佐多岬に近い方まで乗せてもらった。しかも、康子さん「ここに、一人で置いていくのは、なんか・・・悪いわ」と、一緒にヒッチハイクを手伝ってくれる。道路脇に康子さんと一緒に立ち、やって来る車に手を上げた。康子さんのおかげか、通りかかった最初の軽トラックが止まってくれ、岬までは行かないが途中までということで乗せてもらう。

康子さんにお礼を言い、おじさんの軽トラックに飛び乗った。おじさんは群馬に住んでいたことがあるらしく、群馬名物「空っ風の」の話で盛り上がる。鹿児島でこんな話をするとは思わなかった。

下ろしてもらった所で、再びヒッチハイクを始める。車が全くと言っていいほど通らない所だ。ギターをケースから出しギターを弾きながら車が来るのを待った。車が見えると、急いでギターを置き、スケッチブックを持つ。しかし、なかなか止まってはもらえない。

ヒッチハイクで次々と乗せてもらい鹿児島県まで
【写真】ヒッチハイクで次々と乗せてもらい鹿児島県まで

30分以上してから、やっと一台の若いお兄さんが止まってくれた。SMAPの稲垣吾郎に似たお兄さんだ。「似ていますねー」と言うと、「よく言われるよ」と笑っていた。

佐多の役所の前で降ろしてもらう。これより先は岬しかない。しかし、さっきの道より更に車が少ない、通ったのは40分で9台だけ。この9台目の八木さんが止まってくれる。完全な山道を走る事30分、歩いて入る岬の入り口が見えてきた。

展望台が遠くに見えた。「結構あるな~」と思いつつも展望台に続く道を歩き始めた。山道の様に人しか歩けない道だ。足元を見ると何故かフナムシが沢山いるので驚いた。山道にフナムシとは異色の取り合わせだ。歩くこと30分、本土最南端の佐多岬展望台に到着した。

「本土最南端」という言葉。本土で一番南なのだろう。「それじゃ沖縄とか、他の島はどうなのか?」と考えたが、ここにそういう石碑があるのでここがそうなのだろう。何だか腑に落ちないが本土ではここより南はないということだ。

新宿からヒッチハイクを始めて、よくここまで来れたものだと思いながら、ヒッチハイクで乗せてくれた人の顔を一人一人思い出した。

この日は閉まったコンビニの脇にシートを広げて寝る。空を見上げると星が瞬いている、雨の心配はなさそう。人里離れた山奥なので静かだ、東京の雑踏を少し懐かしく思い出した。

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