貨物船に乗せてもらい「沖縄」に行こうと、鹿児島港に向かった。
コンテナが積まれ大きな船が沢山停泊している港。
船の船員らしき人を見かけては、
「貨物船で・・・」
という話をしてみたが、
「沖縄に行かない」
「分からない」
という返事ばかりで手応えが全くない。
近くに沖縄に行くフェリー乗り場もあったので
「お金がないので、何でもしますから、沖縄まで連れて行ってくれないでしょうか?」
と真剣な眼差しで話すが、受付のお姉さんは
「無理です」
と一蹴。
「だけど貨物船なら・・」
とまた、話が振り出しに戻る。

6月の鹿児島の日差しは驚くほど強い、肌がジリジリと焼かれている。炎天下の中、重い荷物を持ち歩いたので少々疲れた。
港のコンテナの陰で昼寝をする。起きると夕方5時を回っていた。
日も傾いて活動するにはよい気温になった。
先ほどのお姉さんに教えてもらった沖縄行きの貨物船は他の港から出航するというので、そこまでヒッチハイクで移動。
教えてもらった「黒潮号」を探すが、なかなか見当たらない。
作業着を着た人達がバーベキュウをしていたので、近づいて、
「この辺りに、黒潮号という船はありますか?」と聞いた。
10人位が一斉にこっちを振り向いたので「うぉ」と驚いた。
とにかく理由をこれこれと話す。
「ああ、その船なら明日入港するよ」
と酔っ払いの上機嫌な声で返答が返ってきた。
「そんなことより、まあ、一杯飲んで行けー」
と、断る理由も全く見当たらないので、注がれた焼酎の紙コップを受け取り、一杯頂く。
当然一杯で終わるはずが無く「まぁまぁ」と勧められ「すみません」を繰り返して結構よい感じに酔っ払ってしまった。
9時を周り、辺りが真っ暗になり、会はお開きになった。
おじさん達が開いている工事の事務所で寝ていいよというので、オフィスの床に寝かせてもらう。硬い床とはいえ屋外に比べれば格段に寝やすい。
明日貨物船には乗せてもらえるのだろうか、まだ見ぬ沖縄に想いを馳せながら眠りについた。