ヒッチハイク用の段ボールを敷き、その上に横になる。
蒸し暑くもなく、風があり、なかなかの野宿日和だ。しばらく、空を「ボッー」と見つめた。
星の少ない都会の空。
どのくらい寝ていたか分からないが「ポツ」顔に冷たいモノが落ちてきた。
「ポツ、ポツ」
次第にその数が多くなる。
「雨か」夜中に降り始める雨は嫌いだ。
最初から降っていれば軒下を探すのだが、夜中に降ってくるとどんなに眠くても叩き起こされる。
すぐに起き上がり、身の回りの荷物をまとめ、キョロキョロと辺りを見回し軒のある場所を探す。幸い近くに軒付きのビルがあったのでそこに逃げ込む。「ふぅ」真っ暗な空を見上げると雨の勢いが増し、道路に叩きつける雨音が大きくなった。
更に雨脚は強まり、すごい豪雨。
起きていて雨を眺めていてもしょうがない。
この軒下でも何とか横になれそうな広さがある。段ボールを敷き直し体を横たえる。雨音に耳を澄ませていたらいつの間にか再び眠りに落ちていた。
「ちょっとすみません!」
今度は人の声で目が覚めた。ハッと目を開けると警備員の服を着ている人が横に立っている。私が目を覚ましたのを確認すると警備員は
「ここで、横にならないで」
とキッパリとした口調で言った。
「はい、今すぐ出ます」と体を起こし、荷を詰める。
時計をチラリと見ると時刻はまだ5時だ。
先程の雨は止んでいて、空は薄明るい。まだ早いけどヒッチハイクを開始するとしよう。
あまりに街の中心なので、少し歩いて街を抜けヒッチハイクポイントを探す。
そしてボードを掲げること30分。
「同じくらいの息子がいるよ」と言う天野さんが止まってくれ、広島インターの手前まで乗せてくれた。
インターの側にくればヒッチハイクは比較的簡単だ。
行き先を書いて、料金所の脇で待つ。すぐに一台の若いお兄ちゃんが止まってくれる。
この後、順調に島根の浜田市まで進んだ。
夜中雨に起こされたせいで少々寝不足だ、今日はこれからどこかで昼寝をするとしよう。