朝の五時、昨日のカギ当番の方がまたカギを開けるためにバス待合所に来た。
「おはようございます」
と挨拶をすると、
「たいしたものじゃないけど」
とポケットから暖かいお茶と、おにぎりを出して
「これどうぞ」
と差し出してくれる。いやいやこれはたいしたものです、ありがたすぎます、素直に嬉しい。
昨日バスの停留所を締め切らなかっただけでも十分なのにその上こんなものまで持って来てくれてこの女性を拝みたくなる
「ありがとうございます、本当にありがとうございます」
と感謝の気持ちを何度も伝えた。
そのままバス待合所で8時15分まで温まって出発。雪の中を歩き始めた。
圧雪のされた歩道は本当に歩きやすいし、ソリも重さを感じないで引っ張ることができる。逆に新雪、雪のないところではソリの抵抗が大きくなり、ものすごく重くなり引っ張るより押すことになった。
また荷を積んだそりは横風に弱く、突然ソリを引く紐が重くなり、振り返ると大抵そりが横倒しになっていた。

北海道のバスの停留所は小屋になっている。この小屋の中、暖房器具こそはないけれど、外気を遮断できるだけでなかなか暖かい。
休憩にはもってこいだったので、1時間くらい歩いてはバス小屋を探し休憩していた。

ちょうど昼時、やはりバス小屋で休憩していると外から入ってくる人がいる、椅子の上に寝そべっていたが、慌ててすぐに姿勢を正し座る。
入ってきた人をチラッと見るとなんと小寺のパパさんとママさん、日曜日に出かけた帰り道だそうです。
小屋の外に止めてあったソリを見つけてくれ、何とお弁当の差し入れをしてくれました。
本当に最後の最後までありがとうございます。暖かい気遣いが心にしみる。
暖かいお弁当で満たされたのは腹だけでない、心もだ。また元気が出てきた、雪の道に戻ろう。
結局、夜の9時過ぎまで歩き続け、適当な軒下を探し、いよいよ本当に登場「スーパーダンボールハウス」を組み立て中に入り込む。
夜中3度くらい目を覚ましたが寒さで眠れなかったということはなかった。
さすが床二重構造!朝起きれば屋根?には雪が・・・。

途中、道路に設置された温度計がある。気温はなんとマイナス6.2℃と表示されている。「ホントか?よ~」
朝は青空さえ見えたのに・・・昼ぐらいから大雪、ホントに大雪でどうしょうもないくらい。
とりあえずバス小屋を探し避難。
昨日も感じたけど新雪の上だとソリもいくらか埋まるので引くのが重くなる、午後の雪で歩道は全て新雪となりソリを押しながら進むこととなる、たぶん時速2km以下。
どうにかこうにかソリを押し羽幌から50km離れた留萌(るもい)市に到着。とりあえず駅の待合い室であったまるとしよう。
午後の大雪でボロボロになった段ボールハウス。雪が張り付き、それが溶けてビチャビチャ。「うわ~、これは寝れないぞ」
夜10時、駅員さんが言うにはもう10分くらいで待合い室は閉鎖するとこのこと。
段ボールハウスも使えない、どうするか?窓の外は風で雪が舞っている「うげっ、寒そう!」。
とりあえずバズ停を探すことにし、夜の町をさまようこと20分バス停を発見、中に入る・・・天井には穴が開いていてそこから雪が吹き込んでいる、風がないだけでも外よりはだいぶまし、とはいってもはき出す息がたばこを吸っているかの様に大きく白くなる。
「さみぃぃぃぃ~」と叫びながらベンチの上に銀マット、寝袋をひきその中に潜り込む。

何とか寝る。