中国に入ってから最初の日、韓国のユンさんにご馳走になって以来あたたかいものを食べていない。
なんとかシムさんに貰ったパンを少しずつ食べながら生きながらえていた。
しかし自転車をこぐと腹が減る。
ふと道際の屋台で売っている、焼きたてのパンの香りについつい引き寄せられた。
パンを指差し「1つ」と言いながら指を一本立てると、パン屋のオヤジは指を2本立てて答えてくれる。
私はその立てられた2本の指を見て「1つ2元(30円)なのか」か・・・ちょっと高い?けれど中国に入ってからは持っていたパンしか食べておらず暖かい物に飢えていた。
「ひとつ」
と言いながら指を1本立てて5元札を渡した。
するとオヤジはお釣りを4元くれる。1つ2元ならばお釣りは3元のはずだ。
「はて?」
と腑に落ちない。オヤジはそんな私にはお構いなしにパンを袋に詰めて渡してくれた。
それを受取り初めて分かった。
パンは袋に5つ入っていた。つまり、パンひとつは「2元」ではなく、その下の単位「2角(3円)」だったのだ。
そしてオヤジは「パン1つ」ではなく、お金を渡すときに立てた指1本を「1元分」と理解して・・・2角×5個=1元くれたわけになる。
この時始めて屋台というか路地に並んでいる店で買ったのだが、あまりの安さにビックリした。久しぶりに暖かいパンを腹一杯に食べた。
なんだかすごく幸せな気分になった。
夕暮れ時、一昨日の「連雲港」と同様かなり大きな市「塩城」に着いたというか、突入した。
ここもかなり大きな市で「市の中心を国道」という単純な造りではなく、街に入ったところで道が複雑に分かれている。
なるべく太い道を選んで進むが脇の小道にズラッと並んだ露店の間も面白そうである、自転車で通れる範囲の小道に寄り道しては太い道に戻る。
小道の両脇にところせましと並んだ屋台はコピーDVDから鳥のから揚げまで実に様々なモノがあった。
屋台通りに夢中になっては幹線に戻る、を繰り返していると日が暮れて来た。
街の中で野宿するのはなんとなく危険な雰囲気がしたので
「とにかく郊外へ出よう」と自転車を走らせる。
街中には街灯があったが、郊外に出ると街灯は一切無くなり真っ暗闇になった。
「こんなところ自転車こいでいたら、危なくてしょうがねぇ」
と思っていると、真っ暗の中を次々と自転車が通り過ぎて行く。
しかも私の自転車もそうだけどみんな自転車にライトなんか付いてない、全く危なくてしょうがない。
車以前に自転車同士がぶつかりそうだ。
「さすが自転車大国!」などと変なところに驚きつつ、寝られそうな場所を探した。
結局11時過ぎても野宿できそうな場所が探せず、郊外の真っ暗闇の中をさまよった。そして最終的に野宿場所に決めたのは会社の建物の前で社員用の通路の上、どこから見ても100%道。
「やばいかなぁ~」
しかし疲れてもう動く気にならず、ここに寝ることにした。会社が営業するまでは車は来ないだろう。
明日は夜明けと同時に出発せねば。