中国を南下するに従って、路上でのバナナ売りをよく見かけるようになった。
「一体い位らいするのだろう?」
素朴な疑問が沸く。
「中国の物価から考えると、もしかしてものすごく効果的な食べ物なのでは」
と思い、道ばたでバナナを広げているおばちゃんに「1元」と試しに言ってみた。
「あいよ」
おばちゃんは嫌な顔せずに言う。
バナナを「一元」買う単位があるのだろう。
おばちゃん慣れた手つきで一房をとり袋に詰め、その袋を天秤にかけて2本バナナを袋から抜き出した。
それを見た私は「そうか一元はバナナ二本なのか」 と思って見ていると、おばさんは2本をテーブルの上に置き、袋の方を私に差し出した。
「えっ、一元ってこっちの方?」
ちょっと驚いた。袋の中には房の大部分が入っているのだ。
渡された袋を開いてバナナを数えてみた、「1本、2本、・・・6本」。
袋の中には房に繋がったバナナが6本も入っていた。なんと「1元(16円)でバナナ6本」である。
「これはこれからの旅でスゴイ有力な食料になるのでは」と思いつつひとつ食べてみる。
モグモグ。
「うまい!」 甘いし日本で食べていたバナナとなんの変わりもない。久しぶりの果物に調子にのって、今買ったバナナ6本をすべて食べてしまう、お腹一杯になった。
あとはひたすらに自転車をこぐ。
そして更にその日の夕方、さっき食べたバナナの味が忘れられず、またバナナを今度は5本買ってしまい、それもその場でモグモグ「うまい!」と食べてしまった。
おかげでこの日はバナナ以外のものを食べなくてもお腹が空かなかった。
満足して自転車を漕いでいると、鼻水が垂れてくるような感じがした。
鼻水だと思い鼻をちょっとすする
「おっ、夏風邪でも引いたかな」
と思って、自転車を止め、バックからテッシュを出し、思い切り鼻をかんだ。
かんだ鼻紙を見てびっくりした、紙が真っ赤に染まっているではないか。
「うわっ、鼻血か!」 と一人で叫びつつ、同時に 「原因は何だろう?」 と考えてみる。
どう考えてもバナナだろう、今日の食事バナナ11本。