色々な人からベトナムの人は良く笑うというのを聞いていた。
そしてそれが本当だと分かるのに時間はかからなかった。
大きな荷物を載せた自転車を押していると、意味は分からないがよく声をかけられる。
そして皆やたらにニコニコしている、こっちまでニコニコしたくなってしまう。
そのニコニコは彼らにカメラを向けた時にも良く分かる、中国ではカメラを避ける人が多く、子供はレンズを向けると逃げ回ったりしていたが、ベトナムではカメラの前で本当にニコニコしてくれる。
野原で蚊帳を広げて寝た。
どのくらい寝たか分からないが「ブルルッルン」というバイクの音で目が覚める。
目を開けるとバイクの強烈なライトが眠気まなこに突き刺さる。
まっ、眩しい。
「誰か来た・・・」
30代から40台の細身の男性だ、側に来て何やら言っているが全く分からない。
中国語は少し慣れてきていたが、ベトナムに入ったらまた全く言葉が分からなくなった。
中国は最終的に「筆談」という方法があったが、ベトナムでは筆談もない。
もうこうなると意思疎通を図る手段はゼスチャーだけになる。
「どうすっか」
と起きあがり蚊帳から出る。
中国では私は黙っていれば中国人と区別はつかないが、ベトナムでは明らかに私が外国人だと分かってしまう。
蚊帳から出た私は、さっき覚えたばかりの「日本人」という単語と「ここで寝る」というゼスチャーをした。
相手にどう伝わったのか分からないが「オーケー、オーケー」とそのオッちゃんは言い、バイクにまたがり野原を出て行った。
再び蚊帳に入り横になる、寝付き始めた頃・・・「ブルルッ」とエンジン音に加えて、話し声が近づいてきた、一人ではないらしい。
「また誰か・・・」そう思っただけ、妙に恐怖心みたいなものはなかった。
再び蚊帳を出ていき、「日本人」「ここで寝る」を言語と非言語を使い説明する、またどうやら伝わったみたいだが二人でなにやら話している、今度は向こうが空を指さし、何か降ってくるまねをする
・・・・・空から降ってくるもの「雨」・・・
すぐに分かった。今日は雨がふる気配がしてなかったので安心していたが・・・
「降るの??」
「降ってくる」(ゼスチャー会話)
となり
「これをしまって俺について来い、屋根があるところに案内するぜ、すぐそこだ」(ゼスチャー会話)
そんな感じが伝わってきたので真っ暗の中蚊帳をたたみ、何も疑わずにそのバイクの二人組について行く。(後々考えるとかなり恐ろしい状況だ)。
ホントにすぐそこの道を入った所に明りが漏れている家があり、先ほどの二人が中に入っていく。
すると数人の男が表に出てきた。
「ヤバイ!」という空気はなかった皆「興味津々」という感じで、なにやら盛り上がっている。
「寝るならあそこがいい、とかあっちはだめだとか」
言っている様に見えた。
話がまとまったのか一人の男が
「こっちへ」
と離れた別棟に案内され、鍵のかかった部屋の鍵を開けた。
壁がエメラルドグリーンの綺麗な部屋だった、天井にはゆっくりと大きな羽の扇風機が回っている。
「ここで寝な」そう言っているようだ。
いきなり野宿からステキな個室になってしまった、この急展開。
素直に嬉しいし、中国ではめずらしい展開がいきなりベトナム初日に起こった。
やはり国が変わると、人々の考え方も変わるのだ。
これから笑顔をの国を走ると思うと楽しみで仕方がない。
ファンから送られてくるゆるやかな風を感じながら眠りについた。