どういった展開だったのか忘れてしまったが、自転車屋のビィと鉄工所のティと
「今日はトレンサップ湖に釣りに行こう!」
という話しになった。
「よく釣りに行くの?」
とビィに聞く
「いや、全然、前に行ったのは半年以上前」
早朝に、3人で自転車にまたがり、トレンサップ湖を目指す。
途中、ティが笹を切り出したので
「何をしてるの?」
と尋ねると
「竿を作ってるんだよ」
と「そこから準備するんだ」手ぶらで釣りに行くと思ったらそういうことか。
笹を切り竿を作ったのだけどトレンサップ湖畔で釣り竿を売っていたので仕掛け付きの笹を買った。
さっきの笹は使わないらしい。
一本500リエル(15円)もちろん日本で目にするようなしなやかな綺麗な竿ではない、笹をぶった切ったそのまんまの竿だ。
対岸の見えないトレンサップ湖に着いた。
湖畔には水上生活者の家が並んでいる。
私達は湖にせり出した小屋から釣り糸を垂らすことにした。
餌を付け針を水中に入れると、スポンジを切っただけのウキがピクピクと動き出す。
10分に一匹は小魚が釣れ、時々10cm超える魚がかかることもあった。
久しぶりに釣りをしたが魚がかかったときの感触がたまらない。
しかしあんまり釣れない時間が長いと飽きてきて、竿を置きっぱなしにしてしゃべったり他のことを始めてしまう。
湖にせり出した小屋で釣りをしていたのだが、ぞろぞろと人が入ってきた。「ナンだろう」と見ていると宴会が始まる。
湖のほとりで宴会「いいですね~」、混ぜてくれないかなと見ていると私達は追い出されることに。
良い釣りのポイントを追い出された私達は湖畔をさ当ても無く彷徨い、また新たなポイントを探すけど中々さっきの様な所はない。
ティが船を漕いでいる少年と話をしている。それから船をこちらに引き連れてきて、
「1500リエル(45円)で1日借り切った」 「1日借り切った」と言うので驚いたが「船も楽しそうだ」と私達は船に乗り込んだ。
細い船でやたらにユラユラとゆれる、船底には水が溜まっていて大丈夫なのか心配だ。
これで沖に出たら沈んで返って来れないのじゃないか。そんな一抹の不安もあったが3人でトレンサップ湖に漕ぎ出した。
慣れるまでは足の位置を少し変えようと動かすだけで「おいおい船ひっくり返るよ!!」なんて叫んでいたのだけど、実はこれが楽しかった。
オールは一本だけで、最初は全く進まず船がくるくると水面を回っているだけだったが、時間が経つにつれ次第にあっちあっちと進みたい方に進めるようになってきた。
そんなフラフラとした私たちの船の脇を慣れた手つきでスーッと水上生活者の船が通り過ぎて行く。
モーターボートがすごいスピードで通り過ぎて行くと波が起こり「ぎゃー!、ひっくり返る・・・」とボートにしがみ付き、ヒヤヒヤすることが何度もあった。
肝心の釣りの方はだめだったけど、船が面白く、そんなことはどうでもよくなっていた。
途中、ビィが他の船に乗ろうとしてひっくり返り水中に落ち、私とティは大笑い。
びしょぬれになったビィは何が起こったんだと言うような表情をしていて、それがまた私達には面白かった。
夕方4時を回った頃、自転車で夕日の差す中をゆっくりと来た道を戻った。