今日も工事中の道が続く。
ホコリがすごいし、進まないし、ろくなことがない。
それにしても中国は工事に携わっている人の数が多い。重機を使うよりも、人海戦術で工事を進めているように見える。人口の多い中国ならではの工法か。
朝飯は、自転車を一時間くらい押した先の小さな店でインスタントラーメン1元(15円)。ここで水をもらい、先を急ぐ。

昼ぐらいまでひたすら自転車を押し続け、橋を越えるとピタッと工事が終わった。
それから舗装道路になった、いいこと尽くめだ。昼飯も橋渡ったすぐの小屋の様な店でインスタントラーメン1元(15円)。

舗装路になったはいいが、今度は急な坂道が待ち受ける。標識があった、目指す中旬まで74km。
「まだまだあるな~」
坂をひたすら、ひたすら、ひたすらに自転車を押し歩く、いや上る、何せ標高3000m以上に行くんだ、長い上り坂に決まっている。
日陰には残雪が出てきた、標高が上がっているのは間違いない。
少しなだらかな場所にでると村があった。明らかに今まで見てきた村と違い、ログハウスように木を組み合わせて作られている。
そこで、またインスタントラーメン1元(15円)、ここはお湯をたき火で沸かしていた。
「うおっ、たき火か」火にあたっていると暖かく離れがたい、知らぬ間に回りの気温はかなり冷えてきているのだ。
その肌寒い中・・・・追い討ちをかけるかのように雨が降ってきた、「シトシト」と長く降り続きそうだ。
坂もまだまだ続いた。標高3000m以上に行くという心の覚悟はできているせいか、坂が続くのが気にならなかった。
坂を上っていると石を積んだような塔があり、そこから下り坂が始まった。ほっ。
私の推測ではまだまだ標高2500mくらい。
また遠くに村が見えた。この村もログハウスの様な家が集まっている。中旬はチベット族の自治州だとは聞いていたので、
「これがチベット人の村のスタイルか・・・」
ちょこっとログハウス風の小店をのぞくと、店主は数珠を首からかけ、見たことのないような帽子をかぶっている既にチベットか。
雨はまだパラパラと降っていた。夕暮れになると更に冷え込む。雨が雪に変わるのじゃないかと思うほど寒い。
村に「大型バス休憩所」と掲げた建物があり、水をもらおうと店に入る。
店員さん達は暇をしていたらしく、「日本人」と分かると「ここへ、ここへ」とたき火の回りに席を作ってくれる。
「いやー暖かい、たき火」
それ故一度火に近づくと離れ難い。隣に座っていた店員さんに
「ここは海抜何メートル?」
と考える様子もなく、すぐに
「3300m」と返って来た。
「えっ??もうすでに3300mなの?」何度聞いても「3300m」という答えだ。どうやら本当にここは3300mらしい。まだまだとおもっていた私にはちょっと拍子抜けだったが、嬉しいニュースだった。
暖かいお茶をもらい、体が温まったところでその店を出ると、今度は道を挟んだ向かいのおじさん達が
「こっちへ来い来い!!」
と手招きしている。やっぱりたき火していたので、呼ばれるままにそこに近づいてまたも焚き火で暖まってしまう。おじさん達はここで働いているらしい。 資材置き場があり、そこには屋根があったので
「ここで寝ていいか?」
と訪ねると「おお、いいぞ」と快諾。もうだいぶ暗くなっていたのでテントを広げて寝ようとすると「こっちで飯を一緒に食うぞ」と工事現場のすぐ側に立てられた掘っ建て小屋に案内される、やっぱりそこもたき火がたかれていた、室内なのに。
はだかの電球が天井からぶら下がっているが、電気が来ていないのか、使わないのか、たき火の明かりで十分なのか?明かりは灯っていない。
若者が竹筒を出してきた、雲南省出よく見た水たばこかと思ったが、ちがう、竹の筒になにかバターの様な物をいれお湯をいれ、ポンプの様に撹拌しているようだ。
ラオスで会った岩崎さんにチベットの話を詳しく聞いていたので「これがバター茶か」とすぐに分かった。
知っていはいたが飲むのは初めてだ、明るさの加減で色はわからないがなみなみとつがれたバター茶を私にくれる。
一口飲んだ・・・なぜか札幌ラーメンのスープを思い出した(なんで)バターが入っているから???お茶にバターが溶けている感じのものだった、そのままですね。そしてバターのせいか体が温まる。
おっちゃんが、壁に掛かっている、袋の中から「ザンパー」と言って、粉を出した、これも岩崎さんに聞いていたので「これがザンパか」という確認になった。
粉である。麦の。
それを直に口に入れるオッちゃん、私もまねして口に放り込むが思い切り「ゴッホゴッホ」とむせる、気管に思い切りはいるザンパ。ザンパを舌にのせすぐに茶を飲むのがいいらしい、とオッちゃんのマネをする。
そうしているうちにおばちゃんが現れ、中華味のスープをくれる。これは今までに食べたことのある中華の味。そこに今たき火で湧かしていたお湯に乾麺を入れゆで、さっきのスープに入れて食べた。これは中華のウドンみたいだった。たき火を囲んでいるので、キャンプファイヤーに似ている。でも彼らにとってはこれが日常なのだ。
おっちゃんが「寝るならそこに寝な」と小屋の隅っこをさしてそこで寝なと言う。寝る前に「トイレは?」と聞くと「ない、その辺全部」らしい(汗)広い、じゃなくてナチュラル。
外に出ると先ほどまで降っていた雨は止んでいた。