朝9時、「今日こそは!」と言っていたマロさんを見送りに行く。
「おはようございます!」
と言いながらドミトリーに顔を出す。マロさんは準備をすっかり終らせていて、今日は本気で出発しそうだ。このところ良くなかった天気も今日は晴れて、出発にはもってこいの日だ。
私と川島君が見守る中「またどこかで!」と軽い挨拶でマロさんは自転車を漕ぎ出した。
こちらも「またどこかで!」とマロさんに聞こえる様に大きな声で言う。
小さくなったマロさんが再び振り返り手を振る、私と川島君はそれに答えて手を振る、マロさんの姿が見えなくなるまで見送った。
旅行者同士の別れはそれほど「シメっぽく」ならない。
また、旅行中にどこかで会えるかもしれなからだ。仮に旅行中に会えないとしても、世界を出歩くような旅行者にとって日本国内は庭の様なものだ。お互い日本に戻れば簡単に再会できる。
旅行中は出会いと別れを繰り返す。そしていつの間にかそれは日常的なものになってくる。別れはいつもつらいが「またどこかで会える」と思うことで、その辛さを軽減できる。本当に辛い別れは「またどこかで会える」と思えない別れだ。
今は江戸時代ではない。
離れてしまったからと言って消息が途絶えることもなく、地球の裏側にいようがインターネットで連絡が取れるのだ。情報伝達手段の発展は別れの悲しみを大分減らしてくれた。
別れの度に「今生の別れ」と思っていたのでは旅人の心が耐えられないだろう。インターネットは旅行の情報を氾濫させて、面白みを奪っていく奴だけど別れの辛さの軽減はありがたい。
マロさんとは5月14日会ってからほぼ2ヶ月行動を共にし、ヒマラヤ山脈の過酷な地を一緒に越え、苦楽を共にしたのだ。この体験は私達の共通のもの、再会した時はこの話をネタに語ろうではないか。
誰かと一緒に走るというのがこれ程まで旅行に変化をもたらしてくれるとは考えもしなかった。
マロさんはこのまま自転車でヨーロッパを目指すという。また世界の路上のどこかで!!フェリーベトン!(ネパール語で「またね!」の意)
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