エベレストに登るにはそれなりの装備が必要である。
言うまでもなく、ティシャツ、運動靴で登れる山ではない。
エベレストに登るのであれば必要な道具をそろえていかなければならなかった。
この点カトマンドゥは非常に便利で、タメル地区には民芸品、土産物屋に混じり、登山道具の店が軒を連ねている。
登山道具と一言で言っても、目指す山や、標高、季節、用途により実に様々な道具がある。
エベレストに登るには特に寒さに強いものを選ぶ。寝袋ならマイナス20度から30度対応のもの、ブーツはプラスチックブーツの高所用のもの、手袋も普通のではなく、ダウンで囲まれた二股タイプのもなどなど。
登山道具の店を一軒一軒周り、道具を吟味していくだけでも相当な時間を費やした。
そこで注意しなければいけないのが、「偽物」である。日本ではあまり考えられないけど、アジアではコピー商品がよく売られている、ここネパールも例外ではない。
バッグや財布のコピー商品を買っても本人ががっかりするか、コピーと知りながら使うかもしれない。しかしこと山の道具に関してはコピーである「偽物」を買うわけにはいかないのだ。なぜなら単純に命にかかわってくることがあるから。
コピー商品は外観こそ、オリジナルと似ているが、その機能性が著しく劣っていることが多い、山の道具に関しては外観よりむしろ機能性が重要になってくる。道具によっては致命的になりかねない。
例えば、有名ブランドを真似た寝袋は、対応温度までブランドのコピーをしている、しかし実質的な機能はそれに劣っていることが多いので、その対応温度では使用不可能になるのだ。
平地だったらそれは「騙された!」で終ることだけど、既に山の中に入っている場合は「騙された!」では済まない。その寝袋を使って生命の確保をしなければいけないのだ、危険なことこの上ない。
そう考えると道具は本当に信頼できる会社のものをそろえることになるのだが、これがまた高額。幸いカトマンドゥには中古の登山道具屋も沢山あり、そういう店にはヒマラヤの登山隊が帰国の際に不必要な道具を売り払っていくので中古ではあるが、オリジナル商品が多い。
私は予算の都合もあるので、新品の店よりもこうした中古道具屋を好んで訪れていた。