ベースキャンプ

長いトレッキング道を歩き、ベースキャンプに到着した。

今日は4月7日なので、カトマンドゥを出発してから20日以上かかった計算だ。ここの標高は5300m、富士山より1500mくらい高い。

ベースキャンプには既に色とりどりのテントが数多く張られていて、自分達のテントまで行くにも迷うほどだった。エベレストの登山期で春は最も隊の数が多く、今年は大小のテントで200張り以上もあるそうだ。こうなると広すぎて、誰のテントが何処にあるか道順をしっかり覚えないと辿り着けない。

【写真】エベレストベースキャンプ、色とりどりのテントが並ぶ。
【写真】エベレストベースキャンプ、色とりどりのテントが並ぶ。

このエベレスト麓の広い土地は、信じられないかも知れないが氷河の上にある。とはいえ氷の上に直接テントを張っているわけではなく、石や砂利の上である。どうして氷河の上なのに石や砂利があるのか、聞く話によるとこうである。

エベレストはもちろん、それを囲む、ヌプチェ、ローチェの峰々に降り注いだ雪が、雪崩となりこの谷に集まって来て、それが圧力と太陽の熱で氷になり氷河と変化する。これらの氷河は雪崩として山肌を離れる時に大量の土砂を含んでいて、ゆっくりと溶解して行く過程でその土砂だけが表面に残り、氷は少しずつ地表に潜っていく。こうして石や砂利が表面に堆積するのだ。

という訳なので「氷河の上」と言っても所々にある断層から白い氷河が見える程度。しかし氷の上というのを実感する時もある。それは地面からの冷気だ。石や砂利の下には氷が詰まっているのでそこから来る冷気は底冷え感が強い。テントに断熱材を敷かなければ寒くてとても横になれたものではない。

ベースキャンプに着いた直後は、この「冷気」と「薄い酸素」に慣れなかった。

「薄い酸素」と言うのは、標高5000mを超えると酸素は地上の約半分になり、地上ではどうということのない動作、靴を履いたり、布団にもぐり込んだりすると「ハァハァ」と息が荒くなることがある。メンバーの中には食欲不振、頭痛、下痢などの高山病の初期症状を示す人も出ていた。

その他ベースキャンプで始めて耳にする奇妙な音があった。ここでは一日に何度か「ゴゴッ」という雷に似た音が聞こえる。始めて聞いた時は「雷」でも来たかと思ったのだが、そうでなくこれは「雪崩」の音。

ベースキャンプを囲む山々の峰に降り積もった雪がそれ自身の重さに耐え切れなくなって、一気に崩壊し雪崩が起きる。遠ければ面白く見物できるだが、大きなものになると、雪の塊がベースキャンプまで届くのではないかと「ヒヤヒヤ」する。夜中に起こる雪崩に起こされるのも日常茶飯事だ。

ベースキャンプはその名の通り、エベレスト登山の「ベース(基地)」になり、ここを起点に登山を開始する。

【写真】氷河の堆積物の上に設置されたベースキャンプ
【写真】氷河の堆積物の上に設置されたベースキャンプ

最新情報をチェックしよう!

06海抜0mからエベレスト編の最新記事8件