高度順応

エベレストの登山期は約2ヶ月である。

「どうしてそんなにかかるのか?」

と疑問を抱く人が多いと思う。1日500メート登っても、7日で足りると言う人がいるが、高所の登山はそんな単純に行かない。

ましてや8000mを超える山になると、その行程は複雑になる。複雑になる要因は「高度順応」があるからだ。エベレストの登山の時間の6割はこの「高度順応」の為にあると言っても過言ではない。

「高度順応」は読んで字の如し、高度に体を順応させていく作業。

通常私達が暮らす世界は標高0mから2000m位の間である。例外的にチベットやネパールの様にそれ以上の高度で生活している人もいるが、人類の多くはこの間で生活している。

ところが登山やトレッキングになるそれ以上の標高に足をいれることになる。標高が高くなればなるほど、気圧は下がり、空気は薄くなってくる、人間の体はこの薄い空気に対応しようと様々な変化を起こす、これが高山病の諸症状を引き起こすのだ。

良く現れる症状は頭痛、吐き気などで、症状が深刻化すると肺に水がたまる、肺水腫や、脳に水がたまる脳浮腫などを引き起こし最悪の場合は死にいたる。このネパールでは観光客が年数人は高山病で亡くなるそうだ。

この高山病を防ぐために「高度順応」が重要になってくる。高度順応が上手くいっていないと高所で動けなくなり、登頂はおろか、下山すら出来くなってしまし、逆に高度順応が上手くいけば登頂の可能性はグッと高まる。

では具体的にどんな事をしているかというと、「高いところに少し滞在、下に戻る」という実に単純明快な作業をするわけである。

大体一日に登っても問題ないとされる500m前後を登り、少し滞在して下るのだ。これを行うと高い場所のいる時に体が順応しようとし、高山病の症状が出る前には下っているので危険は少ない、なおかつその高い高度に体が順応して行くのだ。

エベレスト登山ではベースキャンプからキャンプ1まで600m登り、その日にベースまで下る。次はキャンプ1に滞在、キャンプ2まで400m登り、キャンプ1に戻り、翌日ベースまで降りるという行動をする。

この様な行動をキャンプ3まで繰り返し行うのだ。行動は毎日できるわけではなく、ベースキャンプに戻ったら1日、2日は休憩、また天候が優れない場合も延期になる。この高度順応に少なくとも3週間くらいは掛ける、天候によってはひと月、それ以上のこともある。

この高度順応が終えたところで、一旦標高4000m台まで下山し、体を休める。これはベースキャンプがある5000m台は何をしていても、疲労が蓄積され、体が本当に回復しないという考えから。そして再びベースキャンプに戻る、この時は高度順応が終っている。

後は良い天候を待ち、山頂を目指して出発する。

【写真】エベレストのような高い山には高度順応が欠かせない。
【写真】エベレストのような高い山には高度順応が欠かせない。

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