酔った勢いで

トモさん出会ったのはちょうど私の35歳の誕生日の夜だったのでよく覚えている。

アンダンテのスタッフと旅行者の何人かがお祝いをしてくれて、ご馳走が並んでいるところにタイミングよくチェックインしてきた。

「あっ、どうもこれ食べてもいんですか」

と申し訳なさそうに頭を下げる。第一印象は「控えめで腰の低い人」だった。聞くと歳は私と同じで、長年勤めていた会社を思い切ってやめて世界一周の旅行にでたとのことだった。

以前は接客業をしていたというからあの柔らかい物腰なのかと後から思った。

数日滞在してトモさんはハンガリーの友人を訪ねるというのでチェックアウトしていった。

その間に私は長らく滞在させてもらったここを出発するつもりだったので「またどこかで」と言ってトモさんを見送った。

出発する気は十分だったのだけど、天気や手がけているお手伝いが終らず出発を数日延期した。すると友人を訪れていたトモさんが再びアンダンテに戻ってきた。

「あれ、まだいたんですか?」

と再会。

先日すし職人の奥山さんがふらりとアンダンテに現れて、旅行者を近くの飲み屋に誘ってくれた。

寿司の差し入れといい、奥山さんは気前が底知れずによい。私はスタッフの身分だったのだけど、心優しきオーナーが「行ってきなさい」と許しをくれたので、奥山さん達と飲みに出かけた。

奥山さんの気前の良さは知っていたけど、飲み屋でもそれが容赦なく発揮されてビールが次々と運ばれてくる。

私達は「残しては申し訳ない」と運ばれてくるビールを滞りない様に消費して行く。斜め前に座っていたトモさんも「いやいや、飲めないですよ」といいながらいいペースで飲み続けていたのだ。たった2時間位だったと思う、そこにいた誰もがフラフラになるほど酔っ払ってしまった。

トモさんもだいぶ酔っ払っていて、私とマサ君が出発する話をしながら

「トモさんもどうですか?」

と軽く言って見ると

「うーん、行ってみようかな」

と思いがけない返事が返ってきた。まぁ酒の入った席なので私達もあまり本気にしていなかった。フラフラになってアンダンテに戻る。この日はみんなノックダウン。

朝が来て「昨日は飲みすぎた」と反省しながら目を覚ます、まだ頭が重い。

ドミトリーからともさんが起きて来た。「おはようございます」という挨拶の後に

「昨日、覚えてますか?」

と私

「はぁ何となく。」

とトモさん。

「自転車で行くと言ってましたが、どうします。」

と聞くと

「あっ、そんなこと言ってましたか」

とトモさん。それから一呼吸置いてトモさんが

「それじゃ、行きます」

とハッキリ言った。「ホント?」と確認する私。「行きます」とトモさん。

それからトモさんは「お酒の力って怖いですね、ははは」と苦笑いをした。

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