左側通行に参る。

厳しいという噂の入国審査だったが、拍子抜けするほどあっけなく終わった。

審査官は

「おっ、自転車か?」

と驚いた様子で笑顔でスタンプを押してくれて終った。「どこが厳しいのだろうか」と疑問に思ってしまったほどだ。きっと海路からイギリスに入国する人間が少ないからだろう。

到着した日は既に日が傾いていたのでターミナル近くの野外でテントを作らずにゴロリと横になった。大抵、国が変った場合どこに寝ようかと悩むのだけど、イギリスは何だか治安の良さそうな雰囲気で悩むこともなかった。

朝まで誰も来なかったが、ものすごい朝露で寝袋からバックから荷物全てがベチェベチャに湿っていて、それらを乾かすので出発が遅れた。

荷物を積み込みいざ出発。

ターミナル側の広々とした道路に出るここは交通量が殆ど無いが何だが妙な違和感があった。それは何だか分からないけど、どこか変だ。ポツリと現れた対向車が随分とこちら寄りにすり抜けていき

「なんか危ない車だな」

それから追い越して行く車が対向車線をそのまま真っ直ぐ走って行った。

「なんだあれ」

と思った次の瞬間

「あれ、もしかして左側通行?」

と気が付いた。このところ右側通行が当たり前になっていたので左側通行に気が付かなかったのだ。思い出すと最後の左側通行はパキスタンで2年以上も前の話だ。

道を走り出して感じた違和感はこれだったのだ、よく見ると標識が反対向きだ。

「なんだ、なんだ」と道の反対側に渡り走り始める。しかしこれはこれで気持ち悪い。いままでひたすらに右側を走っていたのを急に左側走行に変えると、頭では左側通行と分かっていても、逆送しているような感覚に襲われるのだ。

まぁいい、その内慣れるだろう。

オランダから来るとイギリスは左走行、さらに自転車道も無いのでとても走りにくい、きっと日本と同じだ。

とにかくA120という名の道路を進む。さっきインフォメーションで見た地図には距離が記入されてた、街の間隔が一桁の数字だけだったのでそれほど遠くないと思ったのだが遠く感じる。標識にも「8」と書かれているが、実際にはもっと遠く感じるのだ。「きっとどこかで道を間違えたのだろう」と思い、あまり気にしていなかったが明らかにおかしい。何かが違う。

ノーリッチという街を目指していたのだが標識には「ノーリッチ35」と書いてあったが30km走っても街になるどころかのどかな田園風景しかない。路肩のスペースにある移動型のハンバーガーが屋あったので、自転車を止め道を尋ねた。田舎でも間違いなく英語が通じる、さすが英国。

「ノーリッチへはこの道でいいのですか?」

と尋ねるとおじさんは

「そうだよ、この道を真っ直ぐだ!」

とニコニコしながら元気に答えてくれた、私は続いて

「後5kmくらいですかね」

と聞くと、

「いやいや、まだまだ15マイルはあるよ」

と言う、おじさんは「15マイル」と言った。「マイル」って単位のマイルか!イギリスはマイルなのか。

左側通行だし本当に参る(マイル)。

NO IMAGE
最新情報をチェックしよう!

12ユーラシア最西端へ編の最新記事8件