今日も面白いと言ったら失礼かも知れないが珍しい観客がいた。
その人は手品が終っても立ち去らず、私の正面に歩み寄って来た、また黒人だったので、
「また、ブラックマジックはするな!」
とか言われるのかと思う。
彼は
「英語はしゃべれるか?」
と切り出した、大抵、話しかけられる時はこの言葉だ。身なりはキチンとしていて清潔感が漂い、ウォークマンらしきも持っている、何となくキチンとした人だ。
「真実を教えてくれ」
と彼は真剣な眼差しで言い始めた、何となくこちらも先が読めていたので
「これはマジックじゃないよ、トリックだよ」
と先手を打った。彼はその意味が分かったのか分からなかったのか、言葉を続けた。
「私には遠く離れた所に恋人がいる、彼女が私をまだ愛しているか、その事実を教えてくれ」
と言う。
「へっ?」
と驚いた。
また新しい展開だ。
「えっ、何?」
私が聞きなおすと、彼は至って真剣に
「だから彼女の本当の気持ちを教えてくれ」
と言うのだ。がーん、この人は私がなんだか不思議な魔法使いで千里眼でもやると思ったのか。遠くにいる恋人の気持ちを教えてくれって。分かるわけありませんがな。
「私はマジック、不思議な力は使えません、私はトリックだけです」
と彼に分かるようにハッキリ短く区切りながらもう一度伝えた。大抵の場合、信じきった人は
「そんなことはないだろう、やってくれ」
とか踏みとどまるのだが、彼は
「えっ、できないの?」
と少し驚いた様な顔をして
「そうかできないのか」
と妙に納得した表情をして行ってしまった。
マジックはマジックでも占いとか予言とかそっちの能力ですね。色々なことを言ってくる人に出会ったが、このパターンは新しい。
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