昨日の路上は散々だったので、「今日こそはよい天気!」と願っていたが、外に出ると一面の銀世界、夜の間に雪が降ったのだ、2,3cm位だけど。
幸い雪は止んでいたので、ベネチアに向かった。雪が降ったくらいなので気温が当然低いのだが、観光客は昨日に引き続き多い、広場は昨日より多い。
12時ちょうどから「フランイング・エンジェル」という企画で、サンマルコ広場に立てられている鐘楼の、高さ96mから0mのステージまで今年のミスカーニバルがワイヤーを伝って空中を降りるというのがあった。12時になってもなかなか始まらず焦らすのが長い。塔を見上げる首が疲れてきた。
しかし96mの高さからワイヤーがあるとはいえ飛ぶのは勇気がいると思う。ビルにしたら20階くらいの高さだ。散々待ってようやく、ワイヤーに吊るされたエンジェルが降下を始めた、会場からは「おお!」という声が上がるが、かなり小さく、想像以上にゆっくりだったのでインパクトはイマイチ。
それを見学し終わって、早速路上に立つ。今日も寒くて指が動かないが大まかな動作のものだけすることにしよう。まだ誰も立ち止まらない時に日本人の女性二人が足を止めた。
芸をしていて日本人というかアジア系の人が最初に足を止めるのは非常に珍しい。女性はこちらを見て、知り合いにでも会う様な驚き顔をしたが、私は全く思い出せないので、私じゃなく後ろにいる誰かかと思い、振り返るが後ろには誰もいない。
「えっ、私?」と指を刺すと、
「そうです、どこかで見たことがあります」
と女性の一人が言う。今まで出会った人を回想するが、どーも記憶に無い。女性は
「旅行されていますよね?」
と聞いてきた。
「はい」
と私、自転車が一緒なら確かに分かるかも知れないが、ベネチは階段が多いので自転車は無い。「えっ、どこかで会いましたか?」と不思議に思って聞くと「ホームページで見ました」と言う。
アジアやバックパッカーが集まる所ならそういう人に出会うことも稀にあるが、路上で芸をしているだけで分かってくれたというのはなかなか無いことだ。
それから手品を終えて駅前付近まで来た所で「岩崎さん」と男性に声を掛けられた。
今度は「岩崎さん」なので確実に知っている人だ。
しかし男性の顔を見ても、どうも思い出せない。
「あの以前お会いしましたか?」
と恐縮気味に男性に尋ねると、
「はい、去年の4月にフィレンツェで」
と男性は言う。そこでなんとなくであるが思い出した。フレンツェの路上で話しかけられた男性だ。名前を聞いた気もするがまたさっぱり思い出せない。
「失礼ですが」と名前を尋ねる、うーん確かにそうだった気もする。男性はモトさんと言う方で、これから電車でフランスまで帰るのだと言う。モトさんの電車が来るまでのわずかな時間だが、カフェを飲みながら話をした。歳も近いせいか話が面白い。モトさんは旅行をよくするらしく「また世界のどこかで!」の言葉で見送る。
出会った人の顔と名前が思い出せないのは記憶力のせいなのかもしれないが、出会った人が多過ぎるとういことにしておきたいところだ。