ベネチアは観光地でカフェやレストランが異常に高い。
例えば、イタリアの田舎でカプチーノを注文して、席に座っても1.2ユーロくらいなのだが、ベネチアでカプチーノを頼むと立ち飲みで1.5ユーロ以上して、席に座るとなんと5ユーロ近くになる。
サンマルコ広場のカフェでは座席に座るとカプチーノが10ユーロするという噂。私は恐ろしくそんなところでは飲んだことが無いので確認していませんが。
2ヶ月近くベネチアに通って調査?した結果、一番安くて座席にも座れてトイレを使用できるのがマクドナルドであることが分かった。マクドナルドのカフェはいわゆるアメリカンコーヒーだが、1.2ユーロで飲めて、もちろん席代などと言うものはないのでそれ以上はかからない。
トイレも完備しているので、トイレに行きたくなったらマクドナルドへ出向くことにしている。ちなみに駅のトイレは有料で80セントするので、40セントをプラスしてもコーヒーが飲めた方がよいと思う。加えて駅は中心地から遠い。
ところで先日、マクドナルドでコーヒーを注文し、窓際の席で道行く人をボーっと眺めていた。
マクドナルドの店員が掃除をしながら近づいて来きて、私の隣のテーブルの置きっぱなしにされているトレイを下げている、同時に私の方をジッと見ている視線を感じる。「むっ、はて?」と思いその店員の方に向くと、店員がおもむろに
「ケイイチ イワサキ?」
と私のフルネームを言うでは無いか!
「うわっ、何?」
ギョッとする。
彼はイタリア人ではなく、少し色が濃いアジア人顔だ。もちろん顔に見覚えはない。想像してみて欲しい異国の見ず知らずの地で入ったレストランの店員が自分の名前を出したら、どんなに驚くか。こんなことはハリウッドのスターでもなけりゃありえないことだ。
驚きながらも咄嗟に考えたのは
「あれパスポートを落とした?」
である。そうでも無い限り見ず知らずの人間が自分の名前を口にすることなど考えられないからだ。
パスポートは自分のカバンの奥底に持っていたのだけど、何かを取り出す時にふと落ちてしまったのか?それほど見ず知らずの人間にフルネームを呼ばれるということは突拍子もなく、予測不可能な事態。
驚いた私は、パスポートをチェックしようと思いながら
「何故、私の名前を知っているのですか?」
と不思議顔全開で彼に尋ねる、
「君の手品をスイスのジュネーブと、去年フィレンツェで見たんだよ、そしてインターネットで君のホームページを見たというわけさ」
と言う。おーなんだそういうことか、ははん。
それにしても、数ヶ月前に少し見ただけの人間の顔を再度見かけたからと言って、認識でき名前も記憶できている彼の記憶力に驚いた。私なんか去年話をした日本人の顔さえも思い出せずにいたのに。
とはいえ本当にびっくりした出来事だった。