今日の路上

路上に出ると、数多くの人に接する機会がある、今日も実に様々な人に出会った。

本日、最初に話しかけてきたのは物乞いの彼。ルーマニアの出身者で帽子を持ちながら道行く人に声を掛けてお金をせがむ。奥さんも物乞いで奥さんは路上に座って器を出している。

名前は知らないけど、彼はいつも私のところへやって来ては帽子を差し出してくる

「今日はまだ始めたばかりだよ」

と言うと、

「今日は日曜日だから人が多いでしょ」

と言う、つまり「今日は稼げるでしょ?」ということなのだ。渋々とコインを一枚渡すと、喜んで

「よい一日を!」

を言いながら立ち去り、また別の人に声を掛けている。あれはあれで大変な作業だ。

手品を始めてから足を止めてくれた人の中に珍しく日本人の姿があった。

外国人男性と一緒にいる女性なので、「在住の人かな?」。足を止めて声を掛けてくる日本人は大抵在住の人である。手品が終ったところで男性の方が日本語で「ありがとう」と話しかけてくれたので、それから少々話をするとドイツのベルリンに在住の楽器演奏の方で今はイタリアに遠征に来ている最中だという。嬉しいことに昼食に誘っていただいたが、日曜日の午後は人通りが多く、稼ぎ時なので遠慮させてもらった。

午前の部が終わり、一息ついたところでイタリア人のファビオ君に話し掛けられた、彼はベネチアの大学で日本語を勉強する学生さんだ。ファビオ君は卒業論文に日本の文化的なことをとりあげていて、日本に対する考察が中々興味深い。日本語も不自由なく話せ「固定観念」という難しい単語も知っているのに驚いた。ファビオ君のピザと私の持ってきたおにぎりを交換して食べる。まさに食文化交換である。

午後、珍しく日本人の学生に声を掛けられた、最初の三人は卒業旅行の三人組み。次の二人は手品が趣味という学生さんだった。この学生さんはイタリアを旅行しているのだけど、ローマでミサンガ詐欺に会ったという。確かにローマにはミサンガを勝手に腕にまいて、料金を請求してくる輩がいるのでローマに行く人は注意するように。

フランス人の親子。「動画を取ってもよいか?」と話しかけれれて、「どうぞ、どうぞ」と返事をする。一部始終を動画に取ってから「フランスのテレビに出ないか?」と言われたが、その話は本当かどうかは不明。一応、メールアドレスとホームページのアドレスを書いて渡したがどうなるだろうか。

タイ人の女性二人組みが話しかけてくる。タイの女性はよく笑い穏やかな印象があるが、この二人もまさにそうだった。

イタリア人の若い女性三人組は「どうやっているの?」とずっと近くで見続けて、最後にはレシートの小さな紙を差し出してきて、「私達の為にこれをお金に変えて!」と冗談っぽく言う、どこかの国の男性が目をギラギラさせながら「これを変えてくれ~」と真顔で言うのに比べればだいぶかわいい。

イタリア熟年夫婦数組が目の前にやって来て「手品をしてくれ」と言う。距離が近過ぎるくらいの位置だった。イタリア人の女性は年配でも化粧がなかなか派手だ、真っ赤な長いつめで毛皮のマフラーをしている。最初は、少し斜に構えてみているのが分かったけど次第に驚いてくれて、見終わったら、夫婦がそれぞれ5ユーロ札を器にいれてくれた。「ありがとう」と見送ると今日も日が暮れる。

【写真】観光地ベネチアでは様々な人が行き交う。
【写真】観光地ベネチアでは様々な人が行き交う。

最新情報をチェックしよう!

15 イタリア回遊編の最新記事8件