先日、路上で知り合った日本語勉強家のファビオ君の家に招かれてお邪魔することになった。
ファビオ君はベネチア大学の大学院生で専攻が日本とイタリアの比較文化論。
彼の日本語力は素晴らしく、テレビに出ている日本語を話すタレント並にうまい。ファビオ君の喋りと聞き取りは完璧で、その上に「えっ、そんな単語も知っているの」と思う程語彙力が豊富である。腰の低さもイタリア人というより、まるで日本人で「日本の会社でうまくやっていけるね」と言ってしまいたくなる程。
ファビオ君はイタリア人なのでイタリア人の目から見た日本がどう映るかが興味深い話だった。そこには海外在住の日本人とも、旅行をする日本人とも違う視点が存在する。
日本の街の構造から、社会のシステムからスーパーのレジの話やコンビニの話から地方の名前の話と様々な話題になった。
その中でベネチアの観光名所のひとつとされているリアルト橋の話が面白かった。ベネチアは市街は運河が道の様に流れているのだが、その中でカナル・グランデと呼ばれる最も大きい運河があり、そこにかかる橋のひとつがリアルト橋。
リアルト橋は橋の上にもしっかりとした店舗の店が立ち並び中々立派なのだが、ファビオ君の話によると、この橋は何度か重さに耐え切れずに橋が落ちたことがあるというのだ。少なくとも今までに2回は落ちたとのことだ。現在かかっている、橋は石造りで落ちるなど微塵も思えないのだけど、以前の橋は木造だったとのこと。
何十メートルもある渓谷にかかる橋ではないので、仮に木製の橋が落ちたとしてもそれほど危険はない様に思える。以前に崩壊したのは結婚式を橋の上で行いその時にあまりに人が橋に乗りすぎたというのだ。1500年代のことだから、中世の衣装を着込んだ人が大勢、橋に集まり、その橋が重みで「ミシミシ」と音を立てて傾いて壊れる様子を想像するとなんだか宮崎駿のアニメのワンシーンみたいで面白い。
落ちる先が運河なので「まぁいいじゃないか」と笑い話になるのだけど、ベネチアの住人は「運河がものすごく汚い」と思っているとファバロ君は言う。なぜなら下水道から生活排水が全て流れ込んでいるのだからと。観光客の目には美しい景観を作り出す運河も地元の人に取っては排水路に映るのかも。まぁ海と直結しているのでそんなに汚いとは思わないのですが。