隣のセネガル人

「隣のセネガル人」と言っても隣に住んでいるわけではなく、いつも路上の隣、近くにいるセネガル人とうことです。

彼らはおもちゃを売っているバングラディシュ人と同様に路上でカバンを売っている。売っているカバンはルイ・ビィトンや、プラダと言った高級カバンなのだけどもちろん偽物。買うほうももちろん知っていて買うことになる。本物が路上で売られているはずはないのだから。

セネガル人にも顔見知りがいて少し話をするようになった。その中の一人は本名かどうか分からないけど「俺はマイケルだ」と名乗ったので、私は彼のことをマイケルと呼んでいる。もうベネチアの路上で4年バックを売り歩いているそうだ。

マイケルの前を通る度に挨拶をするが大抵は

「今日の調子はどう?」

と声を掛ける。

「今日は悪いよ」

と言う時には路上に並べられたバッグが10近くあり、

「今日はいいね」

と言う時はバックの残りが3つか4つになっている。つまり売れたら商品が少なく、売れなかったら多いという単純明快で、見れば分かるのだけど、いつもそうやって声を掛けている。

セネガル人もバングラディシュ人に負けないほど数多くいて、私がよく芸をする通りには必ず彼らの姿がある。

警察が見回りに来ると彼らは「あっ」という間にバックを抱え、一斉に路地裏に姿をくらます。聞くとセネガル人のグループは見張り役が少し離れたところで警察官監視役がいて、監視役がすぐに仲間に携帯電話を使って連絡を入れる、すると連携で次々に仲間に伝わり、「さっ」と通りから姿を消す。

しかし、警察官には路上販売を取り締まるために私服警官もいる、「それはどうしているのか?」とマイケルに聞くと、「警察の監視役は私服警官の顔も覚えているんだよ」と教えてくれた。つまり私服を着ていても、顔を覚えているからすぐに分かるというのだ。なかなか凄い。それでも時々、新人というか見たことのない私服警察官が分からずに捕まることがあるらしい。

偽物のブランド品販売は、路上では一番厳しい処罰を受けるのだ。「路上販売」という行為に更に「偽物販売」というのが追加されるから。そのせいか、バングラディシュ人に比べて、セネガル人の方が警察に対しての警戒がしっかりしている、バングラディシュ人は大抵、セネガル人が逃げ始めるとそれに便乗して逃げている。

まぁ仮に捕まっても、牢獄に入れられたり、国外追放ということはないので、彼らはまた路上に戻ってくるのだが。

今日も警察官と路上販売者の追いかけっこは続く。

【写真】いつもご近所のセネガル人のカバン売り
【写真】いつもご近所のセネガル人のカバン売り

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