車のない街

水の都と呼ばれるベネチアは自動車の乗り入れが禁止されている。

自動車はもちろんだけどバイクや電動自動車も入れないようだ。イメージとしては水路が張り巡らされていて船が人々の足になっていると思っていたのだけど、そんなことはなく、大運河には水上バスもあるが、細かい道は結局は自分の足を使って歩くことになる。名物のゴンドラと呼ばれる手漕ぎの船もあるけれど、一度乗ると60ユーロはするのでとても移動の足としては現実的ではない。

【写真】ベネチア名物の手漕ぎのゴンドラ。
【写真】ベネチア名物の手漕ぎのゴンドラ。
【写真】車のエンジン音は響かないけど、ボートのエンジン音が響く。
【写真】車のエンジン音は響かないけど、ボートのエンジン音が響く。
 道は殆どが石畳で出来ていて、自転車も通行可能といえば可能であるが、運河をまたぐ橋が階段なのでイチイチ自転車を持ち上げねばならないし、細い路地に人が混雑しているので快走など不可能に近い。実際、自転車に乗った人は見かけたことはなく、押して歩いている人をごく稀に見る程度。

車がないとエンジンの音が無くて静かであろうと思うのだけど、大きな運河の近くはモーターボートが行きかうのでとても静寂とは言い難い。時々目にする、パトカーや救急車も船である。

【写真】パトカーもボートになっている。犯人を追いかけることもあるのだろうか?
【写真】パトカーもボートになっている。犯人を追いかけることもあるのだろうか?

街の中を観光で歩くには車が無いというのは相当に快適なのだが、物流の面から見ると全てが船か人の手により運ばれるのでなかなか大変そうだ。

商品の搬入や、宅配便の配送も人が手押し車に荷物を山積みにして運ぶのを見かける。橋の階段を登るのもお手のもので、手押し車の向きをくるっと変えてひっぱりながら器用に上がって行く。

【写真】手押しの車で荷物を配達する。
【写真】手押しの車で荷物を配達する。
それ以外にも街の清掃やゴミの収集も清掃車が入れないために全て人力でまかなわれている。芸をしていたところ丁度ゴミの収拾の人がやってきたので、

「ベネチアには幾つのゴミ箱があるの?」

と尋ねると

「千以上だね」

「千以上!」

と聞いて驚いた。彼が言うには担当があって、同じゴミ箱を朝、昼、夕方と訪れて溜まったゴミ袋を交換しているという。彼は出したゴミを手押し車に素早く乗せ、新しいビニール袋を取り付けると「チャオ」と次の場所に向かっていった。

美しい街並みを維持するのも人手に頼ると途方もない作業になる、しかし華やかな観光地も彼の様な労働者により綺麗に保たれているのだ。ありがとう、感謝しております。

【写真】ゴミの収集も全て人力作業
【写真】ゴミの収集も全て人力作業

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