路上のスプレーアートの芸人エバが「8月に入れば”ファラゴスト”があるから人が今より増えるはず」と7月の終わりに言っていた。
聞きなれない「ファラゴスト」の言葉の意味が分からずに聞き返す。
「ファラゴストって?」
「イタリア人なら誰もが休む週間のことだよ」とエバが答える。
私は日本で言う”お盆”の様な休暇をとる人が多い週のことかと理解したのだが、インターネットで「ファラゴスト」と検索すると、どうやら8月15日の祝日の名前が「ファラゴスト」と呼ばれていることが分かった。エバはハンガリー人なので「路上の人が増える」という現象をみて推測したのだろう。
ファラゴストの語源は昔の皇帝アウグストゥスの祝日という意味らしい。この8月15日を中心としてイタリア人は休暇を取りバカンスを楽しむそうだ。しかしイタリアには一年中を通じて休まなければならない行事が多い。夏の休暇も3週間以上取る人が多いそうだが、そう考えると一年の3分の1位は休暇になっていのじゃないだろうか。それで社会が回るとは日本と比べるとだいぶゆるりとしている感が否めない。
このファラゴストの祝日に「8年ぶり!」で再会を果たしたピエルパウロさんが「自分の街でお祭りがあるので、そこで芸をすれば人が集まるのは間違いない」と勧めてくれるので、彼の家があるスピンベルゴを訪れた。
スピンベルゴはアドリア海より60kmほど内陸に入った小さな街で有名観光地ではないが、モザイクが世界的に有名な町だとピエルパウロさんは言う。
お祭りは人々が中世の衣装を身につけてのパレードがメインで、それ以外に路上に出る露天の店員も中世的な衣装を身に着けている。
そして店先に並べられているモノも中世を連想させ、アクセサリーや彫刻、背表紙が皮の本から「何に使うのだろうか?」と思うようなものが並べられている。街の雰囲気も中世風に統一されて、さながら中世の町にトリップしてしまったような気持ちになる。
さすが地元の人の情報である、路上で芸を始めると簡単に人が足を止める、祝日とお祭りの効果は大きい。