バスカーフェスティバルには様々な芸人がやって来る。
トーマスから受け取ったパンフレットに目を通すと、
「10の国から、40のショー」
と副題が書いてある。リストを見ていくと少し前に滞在してたグラードで出会ったマケドニアのバレンティーノも来るらしい。
そしてイタリアはもちろん、南米やオーストラリア、アイルランド、イギリスなどからも芸人達がやってくる。しかしどう数えても10カ国に満たないのだがパンフレットの「10カ国」は誇大広告じゃないか。そして意外だったのは私以外にも日本人の芸人がいたこと。
大きな街の大きな大会ならまだしも、イタリアの片田舎の小さな街のフェスティバルにわざわざ日本人が参加するとは驚きである。
私の場合は偶然にも路上で主催者に拾ってもらいたまたま参加させてもらえることになったのだが、あらかじめエントリーされている芸人は違う、彼らは呼ばれて来ているのだ。
フェスティバルの開催2時間前に芸人達が一同に集められてミーティングが開かれた。日本人の芸人はなんと女性で、しかも一人で芸をするらしい。海外のフェスティバルに一人で来るとはこれまた驚きである。
話すタイミングを見計らっていたが、なかなか接点がなく、そのままフェスティバルが始まった。
各国から招待されるような芸人にまぎれて「私も演じてよいものか」と疑問を抱きならが自分のあてがわれた会場に向かう。
「誰もいなかったどうしようか」少々心配していたが、会場に着くと既に私の芸を待っている子供達の姿が見えたのでホッとした。
いつも人前でやっているせいか演じることに対するプレシャーはそれほど無かった。観客の反応は路上より数段よく、気分よく演じることができた。
全ての項目が終了したところでベンチで休んでいると、先ほどの日本人の芸人Mさんが通りかかり、話が始まった。
Mさんは海外在住が長く、日本人であるが日本よりも海外を活動の拠点にしているとのことだった。海外での芸の為に訪れた国は100を超えるという。日本人でありながら海外でこのようにして生活している人がいるとは想像もしなかった、何か色々とよい刺激を受けた。