来訪者

 時期外れで旅行者の来ないようなイストラ半島の南端の街で訪問者を出迎えた。

 去年の秋、イタリアのボローニャのキャンプ場で出会ったチャリダーの太郎君だ。

 去年の10月ボローニャを発ち、太郎君は西へ私は東を目指した。その後1年で彼はモロッコを経てユーラシア大陸の西端ポルトガルのロカ岬に到達し、そこから北上しイギリスへ渡り、北欧の諸国を駆け抜けて東欧を南下してきた。

 一方私はというとその間ノロノロとイタリアの北部のアドリア海沿いを無駄に紆余曲折してやっとクロアチアの西側なのだ。

 一年もあれば彼のように大移動が出来るのに、我ながら自分の移動速度の遅さに今更ながら驚くし呆れる。まぁそれはともかくとして、わざわざこんな辺鄙ところまで訪ねて来てくれたことに感謝。

 幸い今はキャンプではなくて室内に泊っているのでそこの宿主に聞くと友人を招きいれても問題ないというのでこの地のはずれの様なところでイタリアの時と同様に安い酒を酌み交わすことになった。

 クロアチアではビールが2lの大きなペットボトルで売られており、これが200円(15クーナ)ほどで買える。

【写真】2リットルのビールが200円前後で買える。
【写真】2リットルのビールが200円前後で買える。

 初日はそれまでの過程の話をじっくり聞いていると知らず知らずのうちにビールが進み、ワインが進んでしまい久しぶりに飲みすぎてしまった。翌日からは少しセーブしつつ、様々な話題を話し、あっというまに数日が過ぎた。

 お互い旅行中の身なのでほどほどで切り上げて解散となる。彼はハンガリーブダペストの宿に自転車を預かってもらいここまでバスで来てくれていたので、発着所まで彼を送る。バスに乗り込む彼を見送りながら

「バスを使って旅行をするとバスの方が楽でよくなってしまうのではないか?」

と訊ねた。すると太郎君はニコニコしながら

「逆に自転車に乗りたくなりました!」

と言う。その答えを聞いて自転車旅行をする人はやはりバスや電車での旅行では得られない、何かを感じながら旅行しているのだなとつくづく思う。珍しく晴れ間が続いた青空の下バスを見送る。さてそろそろ私も自転車が漕ぎたくなってきた。

【写真】プーラのコロッセオの前で太郎君と
【写真】プーラのコロッセオの前で太郎君と

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