なんじゃこりゃ

 旅行をしていると「なんじゃこりゃ」と言いたくなる様なものに遭遇することがある。

 「なんじゃこりゃ」は困惑気味の表現なのだが、実は当人は嬉しい。

「なんだこんなものが世界にはあるのか」という目新しいものに出会った驚きの台詞なのだ。それでは最近のなんじゃこりゃ。

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「なんじゃこりゃ」と言うものに出会う。イノシシに注意??(ザダルから40km)

 ザダールの街の海沿いを自転車を走らせていると突然奇妙な音が海辺から鳴り響いた。

 音色はオカリナの音の様に透明感があり、同時に教会で聞くパイプオルガンの様な神秘的な響きがある。

 アニメ好きの人なら「天空の城ラピュタ」のラピュタを守っているロボットの出す「ピーボン、ピーポン」という音に近い。

「えっ、何の音だ」

ただ事でない音量で辺りに響きわたっている。何UFO?、何ロボットが落ちてくるのか?を辺りをキョロキョロしてみるが音を出しているようなものは見当たらない。それどころかその音がどこからやってきているのかすら分からない。

「幻聴?」と自分の耳を疑うがそんなわけは無い、幻聴と間違えるほどの小さなボリュームじゃなく、ああー煩いと思うほどの大音量。それが今も鳴り響いている。しかし音源の分からない得たいの知れない音に囲まれるというのは不安なものだ。

 日常、耳にする音はすべてその正体が分かっているといってもよい。

 電車の鉄の軋み、車のエンジンの音、テレビやラジオから漏れる音。エアコンんから噴出させる空気の音、まな板と包丁奏でるやさしい音。もちろん人の声。雷の音、雨が打ち鳴らす音。すべて正体が分かっているから気にも留めない。

しかし正体不明、発生源も不明な音に囲まれると怖くなってくる。

これは本能的にそうなのだろう。動物は音を恐れる。人は生命を維持するために音源を知らなくてはならない。などと力説したくなる。いや本当だって、発生源の分からない音に囲まれたら本当に怖いんだって。

夜なんだか不気味な音がして、怖い思いをして音の方に近づいたら風がトタン屋根の端を打ち鳴らす音だったってことありません?ラップ現象というのは音の原因が分からないから怖いのではないか?

 試しに小型のラジオを居間のソファの下に入れて電源を入れてみる。誰もがなんだこの音は?と音源を捜し始めるはずだから。

 話を戻して、前方に初老の男性3人が仲良く横一列に歩いているのが見えた。

 彼らはこの音が気にならないのか?全く驚いた様子も無ければ、頭をキョロキョロとしている素振りもなく、ゆったりと談笑しながら歩みを進めている。

ふーむ、

ここから導きだされる答えは「地元の人はこの音を知っている」だ。もし、この音が未知ならば私同様に立ち止まり、音に耳を傾けて音源を捜すはずだ。しばらく海辺の冷たい風の中で音の正体を突き止めようとしたが、結局この日はこの不思議な音の原因がつかめぬままだった。

 翌日、ツーリストインフォでもらった町のガイド地図を眺める。

 地元の人が知っていて旅行者が知らないというからには、ここにヒントがあるはずだ。目を皿にして地図を眺める。地図には城壁に囲まれたザダルの見所に1から14番まで番号が振ってある。ずらりと並んでいるリストの殆どは時代の列強に奪われては支配された複雑な歴史の中で残った教会などだ。

そしてリストの12番目に奇妙なモノがある。簡単に説明すると海辺の階段だ。「なんだこの階段が珍しいのか?」と説明を読むとこう書いてある

「Sea Organ」直訳すると「海のオルガン」だ。

 場所を確かめると、確かに昨日正体不明の音に遭遇した辺りだ。そしてグーグル様で「Sea Organ」。ありましたウィキペディア。

以下引用「海のオルガン」
“海のオルガンとは海の波によって生み出される水の流れが、巨大な大理石製階段の下に設置した管の中を通ることで圧縮された空気が押しだされてくることを利用した、創作楽器(英語版)である。波の動きは、幾分無秩序だが調和的な音色を奏でてくれている。この装置はクロアチア人建築士のニコラ・バシッチによって、新都市海岸再デザイン・プロジェクトの一環として造られた。この海岸は2005年4月15日にお披露目された。”

という訳で再び謎の音がしていた海辺を訪れる。

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 今日も確かに聞こえている不思議な音。音源が分かってしまえば怖いことは無い。風が吹くたびに音が響きわたる。どうして正体を知りオルガンと聞いてこの音を聞けば、やさしいオルガンの音色に聞こえて来るから不思議だ。しばし潮風にあたりながらの自然の奏でる旋律に耳を傾ける。

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