コルチュラ島に引き続き、山岳部が続いたペリェシャツ半島をひぃこらいいながら走っている。
半島は山が多かったが時々海岸沿いを走ると、小さな村が真っ青な海の際に現れた。海の青さにオレンジ色の屋根が映えている。まだ観光地化していないような素朴な家並み。のんびり出来そうで立ち寄った。
小さな郵便局が開いているだけで後の店はすべて閉まってる「ここも観光シーズンはまだまだのようだ」と余裕を見せたいのだが、先日からの山越えで食料が底をついていた。実際は「おいおい、店が一軒もやってないのかよ」と文句を言っている。早く人間の食べられるものを手に入れなければ。
ふと桟橋から透き通った海を覗き込むと黒い物体が岩に張り付いている。「何だろう」腰をかがめて水面に顔を近づける。
ユラユラとゆれる水面下に黒くトゲトゲしたものが見えた。
「ウニだ!」
こりゃ凄い、海岸の岩場の手の届くところにウニがゴロゴロしている「これは神様からウニを食べろ」との思し召しか。
海中に手を入れ、刺されないよう慎重にウニを一つ取った。陸に上げたウニの針がゆっくりと動いている、そうなのだ、ウニとはキチンとした生命体、生きているのだ。何だか忍びない。しかし、こちらも遊びではない、本当に飢えていたのでナイフを入れて割る。
するの中には黄色いウニがたっぷり!それをスプーンですくいゆっくりと口に運ぶ。うまい!私は服を脱ぎ海に入りうにを山ほど取っては食べ何とか空腹をしのいだ。
。。。というのは妄想で。ウニを開いてみると、その実の少なさに驚いた。あの黄色い食べられる部分は殆どない。「これ食べられる種類じゃないの?」と疑問が沸くが、それでも空腹に負けて恐る恐る口に運ぶ。
小さいウニを口に入れる「ぐぇぇ、何これ!」とあの日本で食べたウニとは似ても似つかない味だ、苦い。ウニはウニでも食べられないウニか。だからこの浜辺の近くに放置されているのじゃないか。だからこんな手の届くところに沢山ウニがいるのか、うーん、残念。
とにかく急いでこの村を抜けて食べ物を売っている店を探さなければ倒れてしまう。私は自転車に飛び乗ると町の出口へ走らせた。