コルチュラ島

スプリトの路上に立っていると中学生くらいの若者の集団に囲まれた。

一挙一動に驚いたり、笑ったりしてくれてずいぶんと反応がよい。話している言葉はクロアチア語のようだが、ここスプリトの住民とは明らかにリアクションが違う。国ごとに手品の反応が違うのはもちろんだが、同じ国内でも地域によって反応が大きく違うことがある。

子供達はひとしきり騒いだ後、驚いたことに見ていた殆どの子供が財布からコインを取り出して器に入れてくれた。子供だったので「いらない、いらない」という動作をしても次々とコインを入れてくれた。なんか中学生をだましていてる怪しいアジア人のようで少し申し訳ない。

去り際に一人の女の子に聞いてみた。クロアチアは小学生から英語の勉強をするそうで、若者は殆ど英語が話せる。

「クロアチアのどこから来たの?」

とたずねると

「コルチュラ」

という答えが返って来た。コルチュラというのはスプリトから南に下った、クロアチアでも6番目に大きな島の名だ。聞くと今日は学校でオペラの鑑賞に来たのだそうだ。スプリトの街は世界遺産でもあるが、アドリア沿岸では一番大きな街でオペラハウスもある。彼らにしたらちょっとした遠足の様なものだろう。日本の小学校の遠足でオペラを見に行くというのはあまり聞かない、やはりここはヨーロッパだ。

これからさらにクロアチアを南下しようと思っていたのでコルチュラ島について調べると、うまい具合にスプリトからコルチュラ島に向かうフェリーが出ていた。冬に散々島巡りをして懲りているはずなのだが、今日のコルチュラの子供の反応を見ていると期待が持てる。子供でさえコインを入れてくれるのだ、大人だったらどうなるんだコルチュラ!気候も大分暖かくなってきたし、行ってみるかコルチュラ島。というわけでコルチュラ行きのフェリーに乗り込んだ。

【写真】コルチュラ島行きのフェリーに飛び乗った。
【写真】コルチュラ島行きのフェリーに飛び乗った。
フェリーは大人一人が50クーナ(800円)で自転車一台が52クーナ(832円)というまたも自転車の方が人より高い。天気のよい日に長らく滞在したスプリトを後にした。

期待を膨らませて到着したコルチュラ島、第一印象は「むっ」である。

街が小さい、フェリーが到着したのは東西に細長い島の西端。コルチュラ島のメインであるコルチュラ市は島の東端。ちょうど反対側でその距離およそ45km。そこまで自力で行かねばならないようだ。45kmなんて楽勝!と漕ぎ出したら大変なことになった。

距離は45kmだが、恐ろしい山道なのだ。今まで走ってきた島は山などなく平坦だったのだが、コルチュラ島は違った。島なのに標高500mを越える山が連なっていてアップダウンが激しい道だ。

コルチュラ島は東西に長い島。

途中に街らしい街もない。綺麗なアドリア海の絶景を期待したが山に囲まれていてそんなものは全く見えない。水と食料を危惧し「おいおい、聞いてないよ」とブツブツいいながら2日かけてコルチュラ市に到着した。

【写真】島なのに山深い。コルチュラ島。
【写真】島なのに山深い。コルチュラ島。

街に到着したのが丁度土曜日の前日。「よしよし、明日は島の人に囲まれて大変なことになりそうだ」とニヤつきながら街に向かった。

街に近づくと人通りが増えていくはずなのに全く人の気配がしない。「こっ、これは・・」以前島巡りで感じた、冬眠の街の気配だ。4月に入り陽気はよいのだが、島はまだ眠ったままだった。道行く人に

「こっ、ここは観光地ではなんですか?」

と焦り気味にたずねると

「そうだよ、5月から人が出始めるよ、まだちょっと早いね」

あれほど懲りていたはずなのにまたも来てしまった季節外れの離島。収入ゼロ。青い海だけが私を慰めくれる。

【写真】人影がない旧市街のメインの広場。
【写真】人影がない旧市街のメインの広場。

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