バーリーショック

ドブロブニクの白い石畳、白い建物の街からやって来たバーリの街は妙に暗く見えた。

それはドブロブニクの町が白やオレンジと明るい色で構成されていた反動ももちろんあるだろうが、実際に建物に使われている石が灰色のような色をしている。

【写真】ドブロブニクから来ると暗く感じる建築物。しかし決して暗いわけではない。
【写真】ドブロブニクから来ると暗く感じる建築物。しかし決して暗いわけではない。
 いつもながらのことであるが、国が変わる時その前に滞在していた国が印象に影響するのは何も建築物だけの話ではない。五感で感じるすべての部分に大きくかかわってくる。

国民性もその一つ。クロアチアの人はどちらかというと控えめで、穏やか。イタリアに来るとことさら強く思う。それはイタリア人、特に南部の人々はこの上なく陽気だから。

私は路上で芸をするのだが、その時が人々の違いを強烈に感じるときだ。クロアチアでは皆が暖かく見守るように見てくれていたのだが、ここでは違う。演じている最中に必ず突っ込みを入れてくる人がいる。

例えばこうだ。私は手品をしているのだが、5ユーロを10ユーロにお金に換えると

「じゃ、オレのも変えてくれ!」

と財布を出してくる人、はまだまだかわいい方で

「じゃ50ユーロを100ユーロに変えてくれ!」

と実際に紙幣を出す人、

「さぁ一緒に家に行こう」

私の横に来て引っ張る動作をするひとなどなど冗談めかして言ってくる人が必ずと言っていいほどいる。 何か消す手品をすると

横にいる奥さんらしい人を指差して

「ちょっと家内を消してくれるか?」

とか、友人を差し出してきて、

「こいつ消してもらいたいんだけど」

と言ってくる。

クロアチアではそんな冗談を言う人は殆どいない。時々冗談を飛ばす人がいたが大抵は観光に来ているイタリア人だった。

芸をしている方としては観客から反応がある方がもちろん嬉しい。

ただし時々困るものもある。このバーリでよくあるのが丁度ひと段落ついて終了したところにやって来て

「オレ見てないから、やってくれ」

と言う人。こちらとしては一通り終わったので終了なのだけど、後からやってきては「見てないからもう一回やって」と言う。「今、終わったばかりだよ」と言うと、「もう一回もう一回」と言ってくる。また話しかけてくる時の距離が近く、勢いがあるのでついつい押し負ける。

と言った具合にイタリアに上陸してからイタリア人の国民性に改めて驚かされている。

【写真】芸に必ず突込み入れてくる人がいるイタリア。人の距離がだいぶ近い。
【写真】芸に必ず突込み入れてくる人がいるイタリア。人の距離がだいぶ近い。

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