クロアチアからイタリアに渡って国民性も劇的に変わったが、もう一つ大きく変わったことがある。
それは生活のリズム。
目の前を人が行き来するから路上に出ている人間にはこれがよく分かる。クロアチアでは午後も人が行き交うが、イタリア南部では午後の1時~5時頃まで人の流れがピタリと止まる。スペイン語で言うところのシエスタ(昼寝時間)。
その止まり方は驚く程で、すべての商店はシャッターを下ろし、カフェも閉まり、道行く人の姿が無くなる。驚いたのはスーパーマーケットも便利な小商店であるキオスクもしまってしまうことだ。
イタリアでコンビニエンスストアは見かけないけど、きっとあれば閉まってしまう勢いだ。全く「コンビニエンス(便利)」の意味をなさないだろう。そして車道の交通量まで激減する。
イタリアの北部ではこれが大抵午後2時前後だったのだが、南部は更に早く始まる、午後1時には店が次々と閉まっていき人が通りから消えていく。南北に長いイタリアは北と南では気温が大きく違うので、それが時間のずれになっているのだろう。
いわゆるシエスタが始まると街はまるでゴーストタウンのようにひっそりと静まりかえる。これが4時間ほど続く。旅行者がこの時間に街を訪れると、することが無くなる。いくつかのファーストフードやレストランしか営業しているので唯一できるのが食事。つまり「食事をして昼寝をしろ」という時間帯になっている。
夕方5時になると、店のシャッターがガラガラと上がり、通りに人が出始める。それから6時過ぎにはショッピングや散歩する人が通りに溢れる。これもまた変わった習慣だと思うのだが、イタリア人は街歩きする人が多い。
少なくとも私は夕方町内を散歩するという習慣はなかったが、イタリア人は家族や友人とよく歩いている。ヨーロッパのいくつかの国を通過したがイタリア人の散歩する率は高いと思う。
午後8時ごろ再び人が減り商店が閉まり始まる。そして9時前後に更に人が減り、これで街の一日が終わりかと思うがそうではない。イタリア人はこの時間に夕食を食べ始め、食後にまた出歩く。つまり、また夕食後の散歩の時間があるのだ。
今度は午後10時を過ぎた辺りから人が街に人が溢れだす。何故なのか分からないが夜の10時ごろから散歩を始めるのだ。自分の記憶を辿っても町内で祭りがあるならともかく、夜の10時以降に散歩に出た記憶はない。イタリアの南部は10時過ぎに親子が仲良く、若者は友人と年配のカップルがゆっくりと歩き始める。
(余談ではあるがこの時間は店が閉まり、最も人々が暇をもてあましているので芸をするにはもってこいの時間帯である。)
そして12時過ぎまで人が通りに人が溢れ、12時過ぎには人が減り始める。これが平日。
金、土曜日になると延々と2時頃まではカフェテラスのあるバーや広場の近くは多くの人で賑わっている。
旅行をしていると習慣が違えば違うほど驚きながらも好奇心をくすぐられる。そう考えるとここは本当に面白いところである。