想定外

2015年2月12日 ベネチア カーニバル

2015年度ベネチアカーニバルの路上の芸許可がおりたので出稼ぎに行くことにした。

ベネチアのカーニバルは毎年開催時期が異なる。それは春分の日から最初の満月の日がイースターでそこからさかのぼり40日というキリスト教の奥深い決まりごとがあるかららしい。

ともかくローマに荷物と自転車は置いて、最低限の荷物と身一つベネチアに向かうことになった。まさに出稼ぎである。最近怪しくなってきた記憶が正しければ、二年前にも全く同じ事をしていたような。

そうである。実はベネチアカーニバルは三度目、最後に参路上したのは2年前のこと。まさかまた参戦するとは思いもよらなかった、想定外。

深夜のバスでベネチアに着くと第一印象は「寒い」。同じイタリアでもローマは南、ベネチアは北なのでその温度差は3~4度はある、しかも今日は天気は悪くみぞれと強風。加えてベネチアは海面にある街なので風が恐ろしいほど吹き抜ける。それもキンキンに冷えた風が。

しかしベネチアに来た以上は寒いなどといっていられない。交通費や宿泊費は最低でも稼ぎたい、でなければ「出稼ぎにきて赤字」という悪い冗談になりかねないのである。

カーニバル初日から早速路上に立った。

前回のカーニバルは二年も前なのでさすがに覚えている人はいないだろう。私の芸は手品なので知っている人がいない方がやりやすい。

と思いながらはじめると、なんと驚いたことに2年前にお金を渡した物乞いがやって来て、「やぁ戻ったの、お金くれない?」と近づいてくる。うわっ、2年も前のことをよく覚えてるなぁと少し感動した。彼が2年も同じところで物乞いをしているのにも驚いたけど。

なんだか、2年も前の人間を覚えていてくれるのは嬉しいなぁと続けていると、今度はゴミの回収係の人が「おっ、久しぶり、戻ったの?」と声を掛けてくれた、「ええっ、覚えてくれてるんですか?」と驚きながら訊ねると、「前も手品してたものね」という。

2年前に路上で見かけた人間を意外と覚えているもんだと関心していると、次はバングラディシュの物売りが「おおっ、久しぶり!」と声を掛けてくれる。さらには警察官まで「あれっ、戻ってきたの?」といいながら、「カードの手品を見せてよ!」言ってくる。さすがイタリアの警察官。顔見知りにはフレンドリーである。職務中にかかわらず。

それから手品師のピエールさんや路上ギタリストのテデスさん、同じく路上の絵描きのイバンさんまで「やぁ」「おおっ」と声を掛けてくれる。なんだ、よく覚えていてくれて嬉しいじゃないか。

そしてまたも全く見知らぬ人に話しかけれる。こちらは全く記憶にないのに「おれ覚えてる?」と言われても失礼なのだが、本当に誰だか思い出せない。うーんと唸っていると「5年前にペサロ(イタリアの街)で会ったよ」

「えっ、5年前?」よく覚えていますねと驚きながら聞き返すと。「そうだね。手品のネタが一緒だからね」と彼はニコニコしながら言う。

はうっ。もしかして皆私じゃなく手品のネタが同じなのを覚えていたのか。

【写真】ベネチアカーニバル定番のマスクをかぶった仮想者。その1
【写真】ベネチアカーニバル定番のマスクをかぶった仮想者。その1
【写真】ベネチアカーニバル定番のマスクをかぶった仮想者。その2
【写真】ベネチアカーニバル定番のマスクをかぶった仮想者。その2

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