【エベレスト登山】南東稜側からの単独登山を考える。

登山をする人の間では「単独」か「単独でないか」で評価が大きく異る。

近年では毎年何百人と登頂する世界最高峰のエベレストであるが、これが「単独」となるとまたずいぶんと話が違う。

エベレストで単独登山というとベースキャンプから上の一切を誰の力も借りずに登るというもの。

これが可能だろうかを考えてみる。

エベレスト 単独
ネパール側、南東稜からの単独登山は可能か?(写真はエベレスト南西壁)

世界初のエベレスト単独登頂者

世界で初めてエベレストを単独登頂したのはイタリアの登山家であるラインホルト・メスナー氏で1980年のことである。

彼はエベレストの北側チベットサイドから新しいルートを開発して誰の力も借りずに単独でその頂に立った。

ちなみにラインホルト・メスナーは世界にある14座の8000m峰を人類史上初すべて無酸素で登頂した人物である。

メスナー氏の単独登山は北稜側の話なので今回はネパール側、ノーマルルートと呼ばれる南東稜からの単独登山を想定してみた。

ネパール側からの単独登頂はどうか?

ネパール側からの単独登頂の話は聞いたことがない。なぜだろうか?

それはベースキャンプのすぐ先にはアイスフォールと呼ばれる難関が構えているからだ。

アイスフォールとはエベレスト、その隣のローツェ、ヌプツェに降り積もった雪が谷に崩れ落ち、それが更に1000mの高低差を崩壊しながら落ちている氷河のことを言う。簡単に言うと天然氷河の迷宮である。

ベースキャンプのすぐ上部には氷の迷宮アイスフォールが待ち構えている。
ベースキャンプのすぐ上部には氷の迷宮アイスフォールが待ち構えている。

仮に単独、ベースキャンプより上で誰の力も借りられないとするならばまずここの通過がイキナリ難易度が高い。

大小様々な氷塊の隙間をぬってルートを探し出すのも大変ならば、時々待ち構えているクレバス(氷の割れ目)を迂回するのも難しい。

さらにアイスフォールを抜けたとしてもその上のウェスタンクームにも巨大なクレバス(氷の割れ目)が待ち構えている。ここをどう通過したらよいのか?

毎年エベレストは登山期に入ると、シェルパで構成されたSPCCと呼ばれるグループがアイスフォールに入りルートを工作してくれる。

迷路のような道にガイドロープを張り、クレバスにはアルミのはしごをかけて通過できるようにする。このようなルート工作が行われるので近年の登山隊は問題なくアイスフォールを抜けられる。

単独登山を目指す人はこれらのルート工作を一切使用しないで抜けなければならない、それだけでも大変難易度が高い。故に評価も高くなるのだろう。

また仮にアイスフォールを通過したとしてもウェスタンクーム、それからローツェフェイスと難易度の高い箇所が次々と待ち構えている。

これらの難所も単独以外ならばフィックス(固定)されたロープを頼りに比較的難なく進めるだろう。

エベレスト登山
アイスフォールを抜けるとウェスタンクームの巨大クレバスが待ち構える。

 

ローツェフェイスは氷の斜面。単独ならばここをアイスバイルを使って登らねばならないだろう。ローツェフェイス上のイェローバンドの岩場も待ち構えている。

ローツェフィエス
キャンプ2から望むローツェフェイス

単独行では荷物の上げ下ろしすら人の手を借りてはならないのだ

エベレストの登山は高度順応を済ませたとしてもベースキャンプから山頂までは4日はかかる。

つまりその間の食料、燃料などすべての荷を自分の両肩に背負い乗り越えていけるのだろうか。加えて山頂アタック用の酸素を背負っていたら更に付加がかかるだろう。

まとめると

 氷の迷宮アイスフォールを抜けて、大クレバスの待ち構えるウェスタンクームを進み、標高7000mにある氷壁を登る。この間をすべて重い荷を背負い、一人の人間の力だけで登攀するのは容易でないことが想像できる。

南東稜からエベレストを完全に人の手を借りず、他人の工作したルートを使用せずに登ることができたらそれはもう偉業である。

今回は以上。

小説エベレスト南西壁を冬季無酸素で目指す男の話

 

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