2014年に入ってからネパール政府はエベレスト登山の入山料の大幅変更を発表し、登山者のゴミ持ち帰りの義務化を相次いで発表した。
そして今回、ネパール側南東稜ノーマルート「最後の難関」と言われるヒラリーステップにはしごの設置を検討しているとの発表があった。
ヒラリーステップとは1953年エベレストに人類初登頂したエドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイが最初に切り開いたとされる岩場。
標高8760mにある約12mの岩壁。
毎年、登山期にはベースキャンプから山頂まで固定のロープが張られるがここヒラリーステップにもロープが取り付けられる。
特にヒラリーステップは岩が露出しており、近年は前年やその前に取り付けられたロープが残留し、無数のロープが張られている状態になっている。
どうしてはしごが必要か?
ヒラリーステップにロープが張られているならば、はしごは必要ないではないか?
ところがこのヒラリーステップのロープが近年大きな問題になりつつある。
それはヒラリーステップが極めて足場が悪く狭いため、追い抜きや、すれ違いが難しいことに起因する。
近年エベレスト登山は公募隊の増加に伴い、登山者が年々増加、そこで山頂付近に順番に一人ずつしか進めない難所があればどうなるか?
想像の通り、渋滞が起こる。
ヒラリーステップでは登山者はロープ手繰りながら登る、後方の人は前の人を追い抜けないために、数珠繋がりなる、また後ろも同じようなことが起こる。
同時に山頂に到達した人が戻ってくる、登ってくる人がいるとその人とすれ違える場所まで上部で待たねばならない。登る人がゾロゾロと行列になっていれば、それを待たねば自分も降りられないのだ。
帰省やUターンのラッシュの渋滞ならば車内で2,3時間は我慢できるが、標高8600m、気温マイナス30度で背中に背負った酸素を消費しながらでの渋滞は非情に危険。命にかかわってくる。
これがヒラリーステップで懸念されていることである。
ネパール政府ははしごをつけることにより、ヒラリーステップの渋滞を緩和させようとしているわけである。
はしごが設置されるとどう変わるか?
ヒラリーステップにはしごを付けるとどのような変化がもたらされるか。
何といっても上り、下りの列を分けられるのが大きい。
現在のところ、ヒラリーステップの岩場は一人がやっと通過できる細い道。ところがこれに第二のはしごルートを作れば、上り、下りの登山者がそれぞれ別のルートで行き来ができる。
これだけで渋滞が大分緩和できるだろう。
安全性が高くなる。
もともとロープで安全を確保しているが、はしごができると更に安全性が高くなるだろう。
移動がスムーズになる。
岩壁をロープを使って上り下りするよりも、はしごを使って上り下りする方がスムーズになるのは間違いない。
以上の理由からはしごを取り付けることにより渋滞が緩和される可能性がある。
ロマンは失われる
これは著者の感想であるが、山頂目前、最後の難関!というところにはしごを取り付けられると少し興ざめな感はある。
60年前にヒラリーとテンジンがやっとの思いで切り開いたルートに固定のはしごをつけてしまってよいのだろうか。
今まで山頂前の難関が「あのはしごのところね」となるのは何とも忍びない。
エベレスト初登頂を成しえた二人は亡くなっており意見を聞くことはできないが、ヒラリー卿はエベレストの商業化を嘆いていたと聞く。このニュースを聞いたらさぞかし驚くだろう。
2020年ハシゴはどうなったか
2020年になってもヒラリーステップにハシゴが設置されたというニュースは聞いていない、計画倒れになった可能性がある。
まとめ
今年に入ってネパール政府はエベレストに関しての規定を大幅に変更している。
その意図として「更なるエベレスト登山者の増加からの緩和」がうかがえる。
登山者の増加を見込んで、はしごの設置を検討。標高8670mにはしごを取り付けると(著者の意見として)ロマンは減るが、渋滞を回避できる有力な手段になりえるだろう。
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