近年旅行をしていると30歳以上の日本人旅行者に会うことが多い、一昔前は20代の旅行者ばかりに会っていたがどういうわけか30歳を超えた人に出会うことが珍しくなくなった。
以前の日本であれば30代といえば働き盛りの真っ最中、自分の周りを見渡しても「旅行しています」と言う人間を見たことがなかった。
以前旅行者といえば
一般の日本人が世界を個人旅行するのが可能になったのは1970年代からではないかと思う。
もちろんそれ以前も世界を旅行する人はいただろが、一部の冒険家や旅行家、富豪などという特殊な人しかできない様な状態ではなかっただろうか。
書籍では小田実氏の「何でも見てやろう」が1960年前後の世界旅行を記していて、かの有名な深夜特急は1974年の旅行の話である。彼らはいずれも26,7歳の若者だ。
深夜特急から40年が経とうとしている現在、30代の旅行者が増えている。
それはどうしてか?
・社会的背景から
・IT技術側面から
・自己要因から
考えてみた。(あくまでも個人的見解で)
社会的背景から
・終身雇用の崩れ、転職が珍しくなくなったこと
第二次世界大戦後の日本は高度経済成長を迎え、雇用が安定したため終身雇用であった。
これにより雇用者は定年まで一つの会社を勤め上げる人が大多数。
そうなると会社を休んで世界旅行なんてしている時間はない。とうぜん30代に世界旅行をできる人は少なかった。
ところがバブル崩壊後の1990年代から終身雇用が危ぶまれる時代に突入した。大企業を勤め上げれば安泰という神話が少しずつ揺らぐ。また同時に「好条件」「やりがい」「やりたいこと」を求めて転職することもそれほど珍しいことでは無くなってきた。
この転職の合間に旅行する人は多い。実際出会う人は仕事をやめて、次の仕事までの空きの時間を利用していた。
・生き方の多様性が生まれつつある
1990年代、同時期にフリーターやニートといった新しい呼び名の若者が登場してきた。これは若者の新たなライフスタイルと一つである。(本人が望む、望まざるは別にして)。
これはあくまでも一例であるが、このように会社に勤め上げる以外の選択肢が徐々に出現し始めている。
近年では20年前では考えられなかったインターネットを利用した個人事業も可能である。
こうなると一昔前のようのに学校を卒業したら、会社に就職という確固たる流れが、当たり前でなくなる。学業を終えてもニートになったり、進学したり、留学したりという多様性が生まれている。
そういった風潮が30代を旅行に出やすくしているともいえる。
・経済的に豊か
高度経済成長により日本の円が強くなったのも旅行をしやすくしてい。また今回のトピックである30代になれば人によっては旅行をするのに十分な貯蓄があるだろう。これが30代が旅行に出やすくしている要因でもあるはず。
バブル崩壊以降の日本は失われた10年などといわれているが、まだ旅行をするには十分な賃金を蓄えることができる。
・晩婚化
雇用形態、ライフスタイル、貯蓄ときて結婚年齢の高齢化や独身率の上昇も30代の旅行者を増やしているといえる。
旅行できる財力があり、独身であれば気軽に旅行に出られる。
Wikipedia(日本語)によると1970年(昭和45年)では夫の平均初婚年齢が26.9歳、妻の平均初婚年齢は24.2歳、それが2008年(平成20年)での夫の平均初婚年齢が30.2歳であり、妻の平均初婚年齢が28.5歳になっている。とあるネット上のデータでは2011年においては夫は30.7歳・妻は29.0歳となっている。
これらのデーターから見られるとおり、年々晩婚化が進んでいるといえよう。
家庭を持たない人は旅行出やすいのは事実でもある。
・世界旅行の一般化
1970年代から比べると色々な意味で世界旅行がずっと身近になった。1970年代ならば「えっ、海外?」と驚かれていたかもしれないが、今は海外旅行と聞いても驚く人は少ないだろう。それだけ世界旅行が一般化してきている。
数年の旅行も「世界一周」という冠をつければ印象がずいぶんよい。世界旅行が身近になってきている今、気軽に旅行にでかけられる。
IT技術側面から
・インターネットが旅行をしやすく快適に。
社会的背景で比較した1970年代の旅行スタイルと現代の旅行スタイルにおいて何が決定的に違うか?それはインターネットの存在である。
旅行での必需品である宿・移動手段であるバスや鉄道・食事はそれほど大きな変化はない。細かく見ていけば変わった点ももちろんあるかもしれないが、インターネットの存在ほど大きいものはない。
宿の予約からオンラインでのチケット購入、レストランの評価までインターネットを介すると旅行が驚くほど、スムーズに快適になる。
こうしたインターネットの活躍が海外旅行の敷居を下げる。こうすることにより旅行する人は増える。
・溢れる情報、そして共感
実は以前にも30代の旅行者は、現在と同数いたとするがただ単に知る手段が無かっただけではないか?という仮定もある。しかし個人で情報を発信する手段が無かったためにその存在が分からなかっただけなのかもしれない。
ところが現代は違う。個人でも簡単に情報発信ができる。ブログやフェイスブックに代表されるSNSを使えば誰でも簡単に情報発信をできる。そして日本にいながらにしてそれらの情報を受け取ることができる。
それにより、同世代の旅行者がいること、また共感をえられることもある。この循環が旅行年齢の高齢化にも繋がる。
自己要因
・自分が歳をとった
自分が20代の頃は年上の人に話しかけるよりも、同年代と思われる人と話しをする。
この延長で30代を超えた場合「自分と同じ年代だろう」ということで若い者に話しかけるより、それより少し上の層にはなしかける。当然出会う人の年齢が高くなる。30代が多くなったなぁと錯覚。
まとめると
上記で述べたように社会的背景、生き方の多様化、個人主義などの移行などが30代の旅行者を生み出し、インターネットがそれに拍車をかける形になっている。
今後は益々30代の旅行者が増えて行くだろうし、近未来には40代の旅行者も珍しくなくなるのではないだろうか。
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