エベレストをネパール側から登ろうとする人は標高5300mのベースキャンプで4週間から長ければ8週間近く過ごす。
ひと月以上を滞在するベースキャンプでの生活はどんなものだろうか。
衣食住について解説していこう。
【衣】
エベレストの春の登山期は4,5月になる。標高の低いインドでは40度を超える猛暑になることもあるが、標高の高いベースキャンプではもちろんそんなことはない。
晴れた日の日中の最高気温は10度前後。風は冷たいので長袖のシャツが手放せない。また大気が澄んでいるので紫外線が強く日焼けしやすい。
太陽が照り付ければテントの中は熱が篭るので暖かい。
しかし日が沈むと一気に気温が下がる。ベースキャンプは氷河の積載物上にあるので、強い冷気に包まれる
曇りの日や太陽の出ない日は0度前後の気温。雨は振らずに5月といえど雪が降る。
夜から明朝までは毎日マイナスになるので対応した寝袋を使用しなければならい。
【食】
国際公募隊での登山の場合、参加者の国籍が様々なので食事はヨーロッパスタイルである。つまりお米よりもパンを主体とした食事になる。パンといってもヨーロッパのパンとは異なる。
ベースキャンプには専属のコックがいて料理を担当してくれる。コックといってもレストランのシェフがいるわけではない。料理の得意なシェルパ族の男性が担当している場合が多い。
・主食
チベタンブレッドと呼ばれる薄いパン、チャパティと言われる小麦粉を薄く延ばして焼いたもの。ふかしたジャガイモ、パン、ライス時々。パスタもある。
・おかず
とり肉、ヤク肉を焼いたものや卵を使ったもの、ポテトや野菜を切ったりゆでたり、炒めたもの。
スーパーマーケットやコンビにが近くにあるわけではないので食は保存の利くものが多い。
時にはネパールの典型的な料理であるダルバートと呼ばれるご飯と雛マメのスープと香辛料で炒めた野菜が出されることもある。
国籍が一つの隊ではその国の料理がメインになる。例えば日本隊であれば日本の食事、韓国隊であれば韓国の食事になる。長いテント生活で自分に馴染んだ料理が食べられるのは大きな利点だ。
・飲み物
お湯に溶かす飲み物が多い。お茶、インスタントコーヒー、レモネードなど。ネパールの飲み物であるチャイと呼ばれる甘いミルクティーも。
【住】
・個人、隊員
公募隊の個人は各自テントを割り当てられる。おおよそ2人から3人様のテントなので窮屈さは感じない。プライベート空間があるのはストレスを貯めないためにもよい。シェルパは数人でテントを共用している。
繰り返しになるがベースキャンプは氷河の上の積載物の上に設置されているので、地面からの冷えが強い。寝るためにはその冷気を遮断するマットが必須になる。
・メステント、ダイニング、リビングなど
メステントと呼ばれる大きめなテントがあり、そこで食事をしたり登山計画の話をしたりする。隊の規模にもよるがメステントは10人以上が立った状態ではいれる大きいものだ。
また隊員達が空き時間にくつろいだり、他の隊員と談笑したりするのもこのテントを使う。
・キッチン
キッチンテントは料理をするためのテント。料理しやすいように石を積み重ねガスバーナーを設置し、鍋や食器を配置している。食器は重さや携帯性を考慮してすべて金属性である。
・トイレ
トイレ用の細長いテントが作られる。いわゆるぼっとん便所である。足を置く台座は石を配置して作り、下部には排泄物を受ける器が置かれている。器は細長く深い。
ベースキャンプにはこれを回収し、低地に運搬する人が定期的に訪れる。
トイレがないと数百人が生活するベースキャンプ一帯は大変なことになるだろう。
・シャワー
一応シャワーテントと呼ばれる、トイレと同様の一人用の細長いテントがあった。ここでシャワーを浴びる。
水道はもちろんないので、大量に沸かしたお湯を頭から少しずつかぶるだけである。太陽の出ている日でなければ寒くて仕方がない。
またお湯を大量に消費するのでシャワーは頻繁に浴びられない。1週間から2週間に一度と言った具合だ。
【その他】
・電気
ベースキャンプに電気はない。しかし近年の電化製品の増加に伴い発電機を持ち込む隊が増えた。
発電機がない隊は最寄のゴラクシェプの山小屋まで下山するしかない。片道2~3時間はかかる。
・娯楽
電気が確保できる隊であればプロジェクターによる映画鑑賞会などを行っていた。
本を大量に持ち込むのがよいが書籍は重量がある。近年では電子書籍などがよいだろう。またコンピューター機器があればゲームをしたり、文章を読むことができる。
標高5000mを超えると容量の大きいハードディスクは正常に起動しなかったり、故障するので要注意。
シェルパ族には独自のギャンブルがあるようでシェルパ達はそれに熱中している。
稀にベースキャンプ滞在者による出し物が企画されることがある。
・インターネット
2013年の時点では3Gの通信ができるらしいが、電波の状態はよくないとの話。確実な通信を行いたいのであれば衛星を通じた通信になる。ベースキャンプに安定したネット回線が来るのもそう遠くないだろう。
90年代後半からのIT技術の進歩はベースキャンプにも影響を及ぼしている。この技術のおかげで、より快適にベースキャンプ生活を送れるようになったのは間違いない事実だ。
【終わりに】
4月上旬のベースキャンプ到着時には目新しいテント生活も5月中旬を過ぎると慣れ、ここがホーム、家のように感じられてくるものだ。その頃には窮屈に感じていた空気の薄さもあまり気にならなくなる。
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